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「五月さんはこの前、おれは覚えてないって言ってたよね。だけど、おれはちゃんと覚えてるよ」
その言葉に驚いて目を見開く。教室内の端っこにいて他の人ともあまり話していないのに、どうして覚えているのだろうか。
いや、むしろ浮いていたから覚えられていたのだろうか。
「おれの方が君に忘れられていると思ってた」
「そ、そんなわけないよ。孤爪くんは髪色が目立ってたし、それにバレー部で活躍もしてた。春高に行った後は、皆んな孤爪くんに注目してたと思うよ」
だから君は誰の記憶にも残っているんだ。別に私が例外じゃない。
「どうして五月さんはそんなに忘れられていたいの?」
「え」
「おれからしてみれば、忘れられていて欲しいって思っているみたいに見える」
その言葉に私は言い返すことが出来なかった。自分の本当の気持ちが分からなくて、口を開けない。
何か言わないと、これを肯定したらいけないような気がする。
しかし、口から出た言葉は想像していた文言ではなかった。
「…孤爪くんに話すことじゃない。だって、君は違うでしょ」
これを言ったところで何か変わるわけではないのに。彼を見るのが怖くて、私は立ち上がり荷物を持ってその場を去ろうとしていた。
すると、彼は私の手を掴んでいた。
「何が違うの」
見上げてくる孤爪くんは、私を行かせまいと手を離そうとしてくれない。
「離して」
「だめ、まだ五月さんに話してないことがある。だから、行かないで」
その言葉に抗うことが出来ず、私はおとなしく腰を下ろした。
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花道時代(プロフ) - えまさん» コメントありがとうございます!いつも感想を書いて頂き嬉しかったです! (4月22日 7時) (レス) id: 0bbda94348 (このIDを非表示/違反報告)
花道時代(プロフ) - 食べるさん» 感想ありがとうございます!そのように思って頂けて、書いた側としては嬉しいです。読んで頂きありがとうございました! (4月22日 7時) (レス) id: 0bbda94348 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月21日 15時) (レス) @page41 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 完結おめでとうございます。主人公の考え方や最終的な二人の関係性のあり方など、共感できるところが多く、すごく楽しめました!日々の合間にこの小説を覗くことが、個人的な楽しみでした😳素晴らしい作品を、ありがとうございました! (4月21日 11時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
花道時代(プロフ) - カナタさん» 感想ありがとうございます!これからも、色んな作品を書いていきます! (4月18日 14時) (レス) id: 0bbda94348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花道時代 | 作成日時:2024年3月11日 21時