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２年生から始まる、帰りの補習。
ふと外を見ると、
渡り廊下の近くの芝生に、
彼が寝ているのが見えた。
「先生、お手洗い行ってきます。」
気持ちより、体が先に動いた。
彼の名前だけでも知りたい。
トイレなんてとっくに通り越して
３階から、一気に階段を下った。
私の息切れに、彼は笑った。
なんて無邪気に笑う人なんだろう。
「スリッパで校外に出るの、禁止っすよ。」
「補習サボってきた私にいう言葉？」
私は笑いながら、彼の隣に座った。
「…ここ、秋になると、
金木犀の香りがするんだよ。」
大きな木を指差してそう言うと、
彼は「へぇ…。」と木を見てから、
鼻歌を歌いだす。
「ba de ya say do you remember ♪」
彼の透き通った綺麗な歌声に、
思わず目を丸くして彼を見た。
「知ってマスか？September。」
「…知らない。
でも、すごく歌が上手なんだね。」
彼は目を細くして、ニパッて笑った。
「おーい！将吉ぃ！そろそろ部活戻るぞ！」
彼の友達が、彼を呼ぶ。
「…将吉って言うんだ。」
「…そうっすよ、さやさん。」
「…名前…、なんで知って…。」
「美人で有名なんすよ、さやさんは。」
赤くなった耳を、
隠すように手で覆う彼。
「……９月の文化祭、来てくださ」
「おい！吉川さや！！！
トイレってのはどんな嘘だっ」
彼の言葉は、
私は3階の校舎から叫ぶ先生の声に遮られる。
「…いま行きまーす」
だるそうな私の言葉に将吉くんは笑った。
もう一度聴きたいセリフを聞けないまま、
私は渋々教室に戻った。
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作者名：水果子 | 作成日時：2018年9月30日 22時
