夕暮れ、落ちていく…【青】 (ページ9)

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真っ白なシャツが肌に纏わりつく季節

日が落ちるのが遅くなってダンス部の練習が終わってもまだ空は水色とオレンジのグラデーションを見せていた

｢だあ〜暑すぎ〜｣

「スカート捲んな、恥じらいは無いのかよ」

｢翔太の前で女の子らしくするメリット無さすぎ｣

家が1件挟んで隣のゆまといつも通り帰路に着く

ただこの日だけは違った

「げっ、弁当箱教室に忘れた｣

｢うっわぁ〜。このまま帰ったらおばさんめっちゃ怒るよ｣

「……戻るわ」

｢おつー｣

くっそあちぃ

首元に少しでも風が入るようにボタンを一つ開けてパタパタとシャツを煽る

空がオレンジ一色に変わる頃

校門まで行くのが面倒くさくて裏門を飛び越えて弓道場を通り過ぎようとした

『今のすごく良かったよ！』

｢ほんと？ちょっとぶれた気がしたけど｣

よく聞きなれた声

ガキの頃からずっと聞き続けてた声とすっと耳に入ってくる愛しい声

入り口の扉が少し開いたままで頭ではやめとけって訴えてるのに体は勝手に動いてて

音を立てないように覗き込んだ

『射った後の余韻が貫禄を感じる』

｢ふふっ、ありがとう｣

『涼太くんすごく絵になっててカッコイイよ』

あぁ、見なきゃ良かった

弓道衣を纏った涼太と制服姿のA

床に座って肩を寄せ合う2人

顔を見合って笑う影が頭から離れなくて

今までに感じたことのない胸の痛みに蹲るしかなかった

・

何分経っただろうか

微かに聞こえる弓を射る音と2人の話し声に耐えられなくて

ふらふらと立ち上がって踵を返した