夕暮れ、落ちていく…【青】 (ページ11)

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東京の空は明るくって星なんて見えない

それでも無性に空を見上げたくなってベランダの柵に腕を組んだ

ご飯を食べても風呂に入っても頭に浮かぶのは夕暮れの中笑い合う2人でどうしようもない感情が駆け巡る

下から"弁当箱はー！？"と母親が怒ってる声が聞こえるけど返す気力なんてなかった

「はぁ……」

誰にも聞かれることないため息が夜の暗闇に溶けていく

夏でも夜はまだ少し涼しくて長風呂でのぼせた体が冷えていく

涼太のことが好きなのかな

涼太の方は？Aのことどう思ってんだろ

すげぇいい雰囲気だったし

よく2人で喋ってるよな

まさか涼太に嫉妬する日が来るとは思いもしなかった

先に会ったのは俺だった

名前で呼んだのも、タメ口で喋ったのも……全部俺の方が先だったのに

気づけば俺の横に彼女はいなくて

あぁ……俺っていつからこんな女々しくなったんだよ

・

『翔太くん、おはよう』

「ｯ、ぁ、はよ」

『そんなに驚く？』

"ふふっ"て笑う姿はやっぱり可愛くて想いは増していく

「いやまだ7時だぞ？」

朝練のない写真部がこんな時間にいたらびっくりするのは仕方ない

しかも教室じゃなくて部室の前

『ゆまに頼まれてね、思い出として練習風景を撮って欲しいって』

「だからってこんな朝早くじゃなくても」

アイツバカだろ

こんな朝っぱらから頼んでんじゃねぇよ

『私が勝手に来ただけだよ。ゆまもびっくりしてた』

"夕練だけでいいよ！？私の説明不足だった！！"

手を合わせて謝るアイツの顔が容易に想像出来て笑う

「ま、俺的にはAが見てくれんならやる気出るし嬉しいから良いんだけど」

『翔太くんのことも撮ってもいい？』

「めっちゃキメ顔しとくわ」

『自然感じでお願いします』

なんて事ない会話が何よりも幸せだった