谷地姉は妹を溺愛している

夜 ページ8

仁花との会議は一旦終了した。


つづきはまた合宿中にでもやろう。

そう言って私たちは兵庫へ帰った。

結と別れるのを惜しげにしていた母をひっぺがして。



『戻って来たで兵庫！』

銀｢Aうるさい、もう夜やから｣

『ごめん』

銀｢…で、ど、どうすんの｣



結が顔を赤くしながら私に聞いた。

どうすんの、とは今からどうするの？の意味だけど。



『最初の予定通り、…ひ、結のとこ泊まる』

銀｢…ん｣



そう言ってひょいっと手を差し出す。

私が握るとぎゅっと握り返された。



銀｢確認やけど、意味分かっとるよな｣

『当たり前やんか、ビビんなよ』

銀｢ビビってへんわ。…ええの｣

『結やったらええよ。…てか、結がいい』

銀｢……あ"〜〜｣

『うるさい』



私たちに似つかわしくない甘ったるい空気が流れた。

私はその後結の家に泊まって、お風呂に入って。


…その後は、想像にお任せする。




そして、夏休み合宿。

臨時のマネとして入ることは監督やチームメイトに許可してもらっている。

皆さんマネが入り用だったのか、歓迎ムードだった。



銀｢…い、おいA。着いたで｣

『んー…』

銀｢んーやないねん、仁花ちゃんらもう来てんで｣

『仁花っ？！ 』



仁花の名前を聞いてバスを飛び降りる。

ぐるりと見渡すと、黒いジャージの集団が見えた。

小さい金髪ヘアーも見える。



『ひとかー！！』



周りの目もお構いなしに仁花に飛びついた。



谷｢あっひょ？！お、おはよ｣

『うんおはよ、久しぶりちゃうけどおひさ』

清｢Aちゃんおはよう。彼氏放ったらかしでいいの？｣

銀｢いやこいつの仁花ちゃん愛は今に始まったことやないんで…ほら俺らはあっちや｣

『仁花〜…また後でねぇ…… 』

月｢Aさん相変わらずだね谷地さん｣

谷｢本当にね…元気で困るよ｣



その様子を他のメンバーは黙って見てた。

気になってる様子だけど、私が離れた以上自分から仁花に聞きに行けない。

味方の人達を除いて、そんな資格は自分に無いと分かっている様だった。


それが分かってるだけでも、情状酌量の余地はありそうやね。



愛｢ねえ仁花ちゃん、あの人は？｣



よりによって君が聞くなんて、私も思ってなかった。



谷｢…えっと｣

『はーい！仁花の姉の谷地Aです！稲荷崎です！皆さんよろしくな！』

愛｢ふぅん…私は瀬川愛莉です、1年生です！よろしくお願いします｣



お前にだけはよろしくしねえよ。

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