谷地姉は妹を溺愛している

早速 ページ15

『…や』

及｢え？何て？｣



目の前の男が聞き返してきた瞬間、私は腹パンをキメた。

そいつはみっともない声をあげてその場に崩れる。



『離れろやっつってんねん』



見下ろして捨て言うと、さすがに気付いたメンバーたちが集まってくる。

半分くらいはその人を心配してたが、3年らしき人たちは一部始終を見てたらしかった。



岩｢こいつが失礼なこと言ったんだろ。すまねぇな｣

『ほんまやわ、どうなってんねんこのエセ爽やか』

松｢ふっ…エセ爽やか…｣

及｢ちょっと俺の心配してよ！｣



爽やかさんが起き上がった。

結構強めに殴ったつもりやねんけどな。



及｢いてて…女の子があんな本気パンチする普通…｣

『んで？何か言うてたやん何？』

及｢嘘じゃん覚えててよ｣



やれやれ、とため息をつく。

何だこいつうぜぇな。

もっぺん殴ってやうか。



及｢何が目的なの？って。君どう見ても演技してるでしょ｣

『チッ、これやからセッターは嫌いやねん』

及｢え｣



侑もそうだけど、セッターとやらは観察力が凄い。

だから私の演技に騙されてくれない。



『しとるよ、演技。だから何？』



そう言うと他の人たちだけでなく、爽やかさんも驚いていた。

自分からカマかけたくせに何やねん。



及｢…それ俺に言っちゃっていいの？俺があの子にチクるかも、とか考えないの？｣

『別に。あんた賢そうやし、そういう無益なことはせんタイプやろ。お節介そうではあるけど』

及｢っはは、こっわい｣

『はっ、あんたに言われたないわ』



すると爽やかさんは何か思いついたような顔をした。

そして考える素振りを見せる。

そして、よし！と手を叩いた。



及｢君の目的はあの子をどうすること？｣

『潰すこと』

及｢なるほどね！俺もやる！｣

『は？』



こいつさてはバカか？

私が潰したい理由とか何も聞いてないのに協力するって？

みかけによらず単細胞やねんな、この人。



『…あんたがええならええけど…』

及｢うんいいよ！こっちで色々見てる方が面白そうだしね｣

『うわ、性格悪そ』

及｢褒め言葉辞めて〜｣

『きしょ』

及｢ちょっと！！｣



まあいいや、と爽やかさんは手を差し出した。



及｢俺及川徹。君の名前は？｣

『谷地A。よろしく』



差し出された手を無視してそう言うと、及川さんは酷いなあと言いつつも笑っていた。



『そういや後ろの方は？』

及｢…忘れてた｣

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