スマイルが7個 ページ7
「お、佐山ちゃんやん。放課後に校舎内居るの珍しいな」
『ん？…大先生じゃん。そっちこそ珍しく部活中？』
2年の教室前、大先生が窓の外を眺めていた。肩からは一眼レフカメラ。
いつも女の子とデートしてるし、写真部に入ってるとはいえほば幽霊部員だと思ってたけど、たまには活動してるらしい。
『顧問と話してたら、思った以上に時間かかっちゃってさ』
「そうなんや。僕は大会近いからなぁ。先輩に大会用の写真出せってうるさくてかなわんわ」
やれやれ、と首を振る大先生は夕焼けと相まって様になる。女の子が絡まなきゃ普通にいい人なんだけどな。
「そういや、ゾムさんにスマイル頼んだんだって？」
『まじで広まってんじゃんか』
「コネシマに言ったんが悪かったわ、それは」
あいつ声デカいからすぐ広まんで、と言われ『今身に染みてる』と返せば笑われた。
いやぁ、ゾムにはほんとに悪いことしたわ。
「スマイルくれたん？」
『もち！動画もある』
「ま？見せてや」
『嫌だよ。今度こそゾムに締められる』
女子には手加減するやろ多分、と不安になる事を言う大先生を片目に教室に入ってスクバを手に取る。続けて大先生も教室に入ってきて、机に軽く腰掛けた。
「ゾムさんがなんでバイト始めたか知っとる？」
『知らないんだよね、それが。聞いても教えてくれなかったし』
ほーんそうなんや、と聞いてきたくせにどうでも良さそうな返事をする大先生。こいつに聞いても何も答えてくれないんだろうな。
じゃ僕はこれで、と結局なにがしたかったのか分からない大先生と教室で別れて校庭に向かう。
バイトを始めた理由はどうであれ、楽しそうだしいいよ。
つまらなそうな瞳にはもううんざりだ。
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