スマイルください！【zm】 (ページ3)

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スマイルが3個ページ3

ゾムくん？とキッチンの方から声を掛けられたゾムは、声を落として「最悪や……」と肩を落とした。

偉い人だったんだろうか。なんかすまんな。

「…アップルパイ1つで180円でございます」

『はいはーい』

スマイルはくれないか…。流石にゾムが真面目にバイトしてないと思われるのも癪だし、これ以上言うのはやめる。

大人しくトレーの上にお金を落とした。

「200円お預かりいたします。20円のお返しでございます」

番号でお呼びしますので、と定型文を聞き流しながらレジから離れようとすると、ゾムが「おい、」と気まずそうに声をかけてきた。

『んー？どうした？』

「スマイル、いるんやろ」

『へ、？』

まさかまさかだ。
驚いて声が出ないでいると、要らんの、と少し不服そうだ。

なんでゾムが不服そうなんだよ……。

『いるいる。スマイルくださーい』

客がまだ来ない事をいい事に、私はゾムのレジの前に立ち止まったままピコン、と動画を起動した。

「動画撮んなよ、もぉ……恥ずいやんけ…」

そう言いながらもニコッ、と笑顔を見せたゾムは顔が真っ赤だ。
いつもの自然な笑みじゃなくて、作り笑いのような不器用な笑み。

まぁこれはこれで面白いしいいや。

『下手くそ』

ふっ、と笑ったらうっさいわ、と笑ってきたのでゾムも満更では無いらしい。

アップルパイを受け取って店を出る時にはもうゾムは別の客を相手にしていたので、声はかけずに帰宅した。

『これは毎日通っても良いなぁ』

放課後の楽しみが増えたな、と撮った動画を再生した。