スマイルください！【zm】 (ページ14)

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スマイルが14個ページ14

今では考えられないくらい、小さい頃は喘息が酷かった。1日寝込んでた時もあったし、入院が長引いたときもあった。

だから、幼い頃は走る事が何よりも羨ましかった。

鬼ごっこもかけっこも、走れないと仲間には入れてもらえない。それが悲しくて悲しくて、ほとんど行かなかった幼稚園の写真の私はいつも泣き顔だ。

規則的に地面を蹴る音。

上がっていく心拍数。

呼吸する事に痛む気管。

苦しくて苦しくて、楽しいと思った。

歳を重ねるにつれて喘息が良くなっていく私が、走りに魅了されていくのは時間がかからなかったのはそれがあるのだろう。

全身から汗が吹き出すほど走って走って、タイムなんて関係ないと言わんばかりにガムシャラに走る。

「お前、めっちゃ走っとるよな。部活終わりも走って帰っとるやろ」

中学の時、隣の席になったシャオロンにそう言われた。走るのが好きな私が陸上部に入るのは必然で、キツい部活後に走って帰るのは、なんというか……好きな事をずっとしていたい、という単純な理由からだったのに、そう言われて普通はしない事なのだと知った。

『走るの好きだからね。走って心臓痛くなると、生きてるって思う』

幼い頃は心臓が痛くなるのは喘息のせいだったから嫌いだった。けど今は違う。心臓が痛いのは、私が生きてるからなんだって思う。

「なんやそれ」

『私、生きてるって思うために走ってるのかも』

自分で口にして、すとん、と落ちた。
私には走る事しかない。それが全てで、生きる為に走ってる。走れない私は私じゃない。

「気持ち悪ぅ……」

『聞いてきた癖に酷い奴！表出ろ！』

「ゴリラに殺されるー！」

『ぶっ飛ばす』

なんて話した、中学の春。