スマイルが2個 ページ2
『お疲れ様でした！』
部活終わり、さっさと着替えて部室に残るメンバーに声をかければ後輩の元気な声と、同級生の気の抜けた声が返ってくる。先輩は元々少なかったのもあるが、取りたい資格があるとかで先週最後の一人が辞めていった。
部活終わりはお腹が空いている。正午に食べたお弁当なんて欠片も残ってない。所持金を考えながら、校門をでる。
コンビニの新作スイーツ美味しそうだったよな、とかハンバーガーショップのアップルパイでも良いな、とか。
家ではお母さんが料理を作って待ってるはずだから、ガッツリしたのじゃなくて軽いのがいいよね。
『あ、』
学校から少し離れたハンバーガーショップ。
深めに被られた帽子からは、見慣れた茶髪と緑色の瞳。
ゾムだ。
私が気がついたのとほぼ同時に、ゾムも窓の外からの視線に気がついたのかチラチラと視線をさ迷わせた後、私を見つけてうげっ、と顔を顰めた。
新作スイーツにしようかと思ったけど、やっぱりやーめた。
ハンバーガーショップに入ると、いらっしゃいませー、と元気な声が聞こえてきた。
並んでいる客は私以外居ないみたいで、ニコニコとゾムのレジに近づけば、それに比例してゾムは嫌そうな顔をしていく。
『ゾムくーん。こんな所で会うなんて奇遇だね！』
「お前っ！まじで来んなよ！」
『偶然だよ、偶然』
仕事中だからか小声で嫌がるゾムをいい事に、携帯を取り出して写真を撮った。これはいいネタになりそうだ。
「勝手に撮んなや！」
『仕事して仕事。私はねー、アップルパイかなぁ』
ぐぬぬぬ、と悔しそうな顔をするゾムはタッチパネルに入力してマニュアル通りに「以上でよろしいでしょうか」と聞いてくる。カタコトなのがやけに面白い。
『あ、それと』
にこぉ、と笑ったの分かったのかゾムは嫌そうな顔をした。
『スマイルください！』
「マジで帰れお前！！」
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