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振り払おうとするも虚しく、強引にコンテナの間に連れ込まられる。

「Aさん、」

『っ、離してっ!』

「落ち着いて下さい」

目の前に立つスーツ姿の見知らぬ男に混乱し、抵抗する私の腕を静かに離すと、静かに告げる声。

「何もしませんから、落ち着いて。Aさんですね?」

コンテナに背をあずけ震える私から距離をとり、目線を合わせる長身の男。

『誰…』

「秋山と言います。Aさんの叔父さんの、会社の人間です。」

その黒いスーツの胸元に見覚えのあるバッチがつけられてるのを見て、緊張の糸が切れる。

『っ、』

コンテナを背に崩れ落ちる私を支える秋山さん。

目の前に膝を着いた秋山さんが、何かを言おうと口を開いた時、こちらへ向かってくる複数の足音が響く。

「…」

秋山さんが音のする方に鋭い視線を投げた瞬間、

「A!」

息を切らしたスーツ姿の敬浩くん、啓司くん、野替さんが姿を現した。

『っ、』

皆の顔を見た瞬間、涙が滲んだ。

「…大丈夫か、」

電話をする野替さんの元に行く秋山さんに代わり、目の前にしゃがんで私の頭に手を伸ばす啓司くんに頷く。

「何かされた?」

その横に膝をついて尋ねる敬浩くんに首を振ると2人が安心したように小さく息を吐いた。

沈黙の中、静かな足音が辺りに響くと、敬浩くんと啓司くんが立ち上がり、通りに目を移す。

「A、」

足音が止まり、叔父さんの姿を視界に捉えた瞬間、涙が零れ、その胸に飛び込んだ。

『っ、叔父さんっ、!』

「大丈夫、」

私の背中を擦る叔父さんの香りが鼻腔を掠め、安心感が胸に押し寄せる。

「もう大丈夫だ」

顔を覗き込み柔らかな声で告げる叔父さん。

「怪我はないか?」

叔父さんの言葉に、スーツをくしゃりと掴みながら頷くと温かい手が頭を撫でた。

「歩けるか?」

『だい、じょうぶ、』

「会長、」

叔父さんに支えられながら足を踏み出すと、敬浩くんの静かな声に、叔父さんが振り返る気配がした。

「…2人?」

敬「はい」

「A、」

再び私を呼ぶ声に顔を上げると叔父さんと目が合う。

その視線が静かに、肌蹴たブラウスと血が滲む腕と膝に移る。

私の視界を覆うように目元に掌を乗せ、敬浩くんの方に顔向けた叔父さんが、

「…潰せ」

『っ、』

静かにそう言い放った瞬間、ビリビリとした空気が辺りを包んだ。

目元を覆う手が離され、叔父さんの顔を見ると、優しい表情を浮かべた、いつもの穏やかな瞳と目が合った。

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やぁ(プロフ) - こんばんは。はじめまして!この作品が大好きで何度も読ませて頂いております。9のパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願い致します! (4月8日 23時) (レス) id: afb0f19d33 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - こんばんは🌃いつも楽しく見させて頂いています。9のパスワードを差し支えなければ教えて頂けないでしょうか? (1月3日 21時) (レス) id: 9ba221d380 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - はじめまして。この作品が大好きで何回も読ませていただいております!もし、差し支えなければ9のパスワード教えていただかないでしょうか? (12月16日 16時) (レス) id: 8ef99b4bc6 (このIDを非表示/違反報告)
博子(プロフ) - 続きが読みたいので、パスワードを是非教えて下さい! (9月17日 7時) (レス) id: dc8dec8862 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして。最近この作品と出会って一気に読ませていただきました。続きはもう読めないのでしょうか? (7月14日 10時) (レス) id: 222fa2acf1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:jiu. | 作成日時:2019年6月2日 20時

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