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あれから何分過ぎただろう。
携帯を開きたくても、画面の明かりが男達に居場所を教えてしまいそうで怖くてできない。
「どこにいんだよ!」
男の苛立たしげな声と、何かを蹴飛ばす大きな音に見が竦む。
理性を失った男達に見つかった時を想像し、心臓が軋んだ。
『(助けて、)』
必死の願いとは裏腹に、徐々に近づく足音。
「おい、こっちじゃねぇの!?」
男の声が徐々に近づく。
『(お願い、こないで)』
男達の声と足音が不意に途絶え、
「見ーつけた」
その言葉とともに腕を掴まれる。
『っ、!』
地面に引き摺り倒され、髪の毛を掴まれる。
「手間かけさせやがって…」
正気を失った瞳が私を捕らえ、男の体が伸し掛る。
『っ、やめっ、!』
男の手が胸元のシャツに触れた瞬間、視界の端で黒い何か動き、続いて唸るような呻き声が聞こえた。
ーガシャンッー
鈍い大きな音が響いたと思ったら上に跨っていた男が吹き飛び、コンテナの横へと転がった。
「……楽しそうなことしてんな。俺も混ぜてくれよ」
暗闇の中、ゆっくりと吐かれた言葉。
転がる男から這うように距離をとり、声のする方に目を向けると、
『ひっ、』
白目を剥いて頭から血を流す、もう一人の仲間の男の口を背後から塞いで、転がる男を見下ろすスーツ姿の男の姿があった。
男を抑える手とは逆の手に握られていたスパナが地面に落ち、カランと静かな音を立てる。
男を見下ろしていたスーツ姿の男の視線が、地面に座りこむ私へと静かに移る。
『っ、』
港湾の暗いオレンジの明かりに照らされたその男の顔を見た瞬間、息を飲んだ。
後部座席から静かに窓の外へ向けられる曇った瞳。
ーもう、何も心配することないからなー
そう声をかけた叔父さんに、頭を下げる姿。
ー鈴木、ー
沈黙したまま叔父さんを見上げる色をなくした表情が、記憶に蘇った。
「…行け」
男が、あの時の無表情のまま、私を見下ろし低く言葉を零す。
『え、…』
「ここから離れろ」
真っ直ぐ私を見据えそう告げた男に、ふらついた足で立ち上がる。
男達から、スーツ姿の彼からゆっくりと後ずさり、背中を向けた。
「なんだよお前…来んなよ…っ、」
コンテナの迷路を潜り抜ける後ろで、耳を劈くような男達の悲鳴が聞こえた。
『っ、』
脳裏に響く悲鳴を頭を振って払い、明るい場所に向かって足を早める。
なんで、あの人が、?
疑問を抱き走る私を、間の路地から伸びてきた腕が掴んだ。
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やぁ(プロフ) - こんばんは。はじめまして!この作品が大好きで何度も読ませて頂いております。9のパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願い致します! (4月8日 23時) (レス) id: afb0f19d33 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - こんばんは🌃いつも楽しく見させて頂いています。9のパスワードを差し支えなければ教えて頂けないでしょうか? (1月3日 21時) (レス) id: 9ba221d380 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - はじめまして。この作品が大好きで何回も読ませていただいております!もし、差し支えなければ9のパスワード教えていただかないでしょうか? (12月16日 16時) (レス) id: 8ef99b4bc6 (このIDを非表示/違反報告)
博子(プロフ) - 続きが読みたいので、パスワードを是非教えて下さい! (9月17日 7時) (レス) id: dc8dec8862 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして。最近この作品と出会って一気に読ませていただきました。続きはもう読めないのでしょうか? (7月14日 10時) (レス) id: 222fa2acf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:jiu. | 作成日時:2019年6月2日 20時