▽ ページ21
『遅いな…』
机の上の携帯から壁の時計に目を移し、腰を上げる。
『迷ったかな…右に行ったら皆の部屋しかないんだけど…』
複雑に入り組んだ離れの廊下とそこに並ぶ寝室の数々を思い出しながら歩いていると、
『ぶっ、』
廊下の曲がり角で硬い何かとぶつかった。
｢どこ見て歩いてんだよ｣
ガラの悪い言葉を吐かれ正面衝突の主を見上げる
『広臣くん、伊杏見なかった？』
無表情で私を見下ろす広臣くんにそう問うと無言で眉間を寄せた。
｢…あのうるせぇ女？｣
呟かれた言葉に思わず笑みが零れる。
相変わらずだな、広臣くんは。
『トイレ行くって出てったんだけど…
｢便所｣
そう、トイレ行くって30分前に…ってまだトイレ！？』
｢…｣
『まさかケンチくんの出したお茶が悪くなってた？』
悶々とする私の横を通り抜ける広臣くん。
｢…大丈夫だろ、入ったのさっきだし。｣
『え、』
すれ違いざまに呟かれた言葉にその背中を見つめる。
『今まで何してたの！？』
｢知らねぇよ｣
相変わらずだな！広臣くんは！
歩いていく背中を見送っていると不意に振り返った広臣くん。
『はい？』
「…」
何か言いかけた広臣くんは私から視線を逸らし、再び背を向けた。
『何？』
後ろ姿に呼びかけてみるもそのまま無言で廊下の先を曲がる広臣くんに首を傾げ、トイレへと向かう。
「あっち？でもこっちから来たし、」
『依杏？』
廊下を右往左往している依杏に声をかけると、勢いよく駆け寄ってくる依杏。
「助かった…また迷子になるとこだった！さっきもトイレに行くはずが無限廊下に入っちゃってイケメンヤクザのお兄さんが助けてくれたの！…てゆーか、」
不意に言葉を区切り、気まずそうに私から体を離す依杏。
「さっきはごめん。Aに最低な事言った。」
しょんぼりする依杏の手を握ると腫れた目と視線が合った。
『本当に気にしてないから。依杏も気にしないで？あとこれ、』
依杏の前に携帯を差し出す。
「私の携帯？」
『お母さんから何回も電話あったよ。』
「え、」
『きっと心配してるんじゃないかな？』
私の言葉に携帯を受け取り、唇を噛んで画面を見つめる依杏。その視線が私に写る。
「ごめんA。私、」
『送ってく！』
そう返すと、不意に体に感じる衝撃。
「A、大好き、！」
私を抱きしめる依杏に笑みが零れた。
─私は、いつも正直でストレートで全力な依杏が羨ましい─
強く抱きしめられながら、ふと、そう思った。
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やぁ(プロフ) - こんばんは。はじめまして！この作品が大好きで何度も読ませて頂いております。9のパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願い致します！ (4月8日 23時) (
レス) id: afb0f19d33 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - こんばんは🌃いつも楽しく見させて頂いています。９のパスワードを差し支えなければ教えて頂けないでしょうか? (1月3日 21時) (レス) id: 9ba221d380 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - はじめまして。この作品が大好きで何回も読ませていただいております！もし、差し支えなければ9のパスワード教えていただかないでしょうか？ (12月16日 16時) (レス) id: 8ef99b4bc6 (このIDを非表示/違反報告)
博子(プロフ) - 続きが読みたいので、パスワードを是非教えて下さい！ (9月17日 7時) (レス) id: dc8dec8862 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして。最近この作品と出会って一気に読ませていただきました。続きはもう読めないのでしょうか？ (7月14日 10時) (レス) id: 222fa2acf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：jiu.
| 作成日時：2019年6月2日 20時
