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伊杏を部屋に入れ、目の前のテーブルにティッシュボックスを置くと豪快に鼻をかむ伊杏の隣に腰を下ろす。
『少し落ち着いた?』
「うん…」
その言葉に静かに伊杏の頭を撫でる。
『家出って…何があったの?』
「親に…出てけって言われた」
『喧嘩したの?』
「喧嘩じゃない!いつもそう!」
キッと私を見てまた目を潤ませる。
『…』
「さっきも弟が模試の点数が悪かったからって私に当たってきて、“八つ当たりやめて”って言ったら逆ギレだよ!?そんで弟が下に降りてきてうるさくて勉強に集中できないって言ったら、弟にはコロッと態度変えて。」
堰を切ったように喋り、ケンチくんが淹れてくれたお茶を飲む伊杏。
「だから弟に“うるさくて勉強出来ないとか甘ったれんな、どっか行って勉強しろ”って言ったらお母さん、“あんたが出てきなさい、勉強もしないでバイトばっかりのくせに”って…酷くない?そんな言い方ある?」
『…それは酷いね、』
「だから一番近い優芽の家行こうと思ったけど、家族でサッカー観戦って言ってたし、紗羽んちもうちの沿線だけど家知らないし、バイト先行っても姫崎に泣き顔見せるのむかつくし、姫崎って店長なんだけどさ、」
『うん』
「だからAのとこきたのっ…」
『それはいいんだけど…親に連絡しなくていいの?』
「連絡するわけないじゃん!家出だもん!」
目を釣りあげて私を見た伊杏は、
「お母さんはいつもそうなの」
ティッシュが散らばるテーブルに視線を落としながら呟く。
『ん?』
「いつも弟ばっか。お父さんも。弟の方が好きなの見ててわかる。」
『…』
そう言って悲しそうに瞳を伏せる伊杏。
『伊杏、「あたしも、」
声をかけようとした私の言葉を遮るように伊杏が声を漏らす
「Aみたいだったら良かったのに」
呟く伊杏を静かに見つめる。
『…』「…」
沈黙の後、ハッと顔を上げた伊杏の赤く腫れた目と視線が合った。
「っ、ごめん」
『ううん、』
「…あたし何言ってんだろ、」
『気にしてないよ』
言葉を返すとくしゃりと顔を歪めた後、
「……トイレ、借りていい!?頭冷やしてくる!」
気まずそうに立ち上がる伊杏を見上げる。
『…うん。場所分かる?』
「分かる!ここ真っ直ぐ行って右に行って突き当たりを右だよね!大丈夫!覚えてる!」
『え、伊杏!、』
部屋の襖を勢いよく開け廊下を駆けて行く足音を聴きながら、溜息をついた。
『…突き当たりを左、なんだけど』
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やぁ(プロフ) - こんばんは。はじめまして!この作品が大好きで何度も読ませて頂いております。9のパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願い致します! (4月8日 23時) (レス) id: afb0f19d33 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - こんばんは🌃いつも楽しく見させて頂いています。9のパスワードを差し支えなければ教えて頂けないでしょうか? (1月3日 21時) (レス) id: 9ba221d380 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - はじめまして。この作品が大好きで何回も読ませていただいております!もし、差し支えなければ9のパスワード教えていただかないでしょうか? (12月16日 16時) (レス) id: 8ef99b4bc6 (このIDを非表示/違反報告)
博子(プロフ) - 続きが読みたいので、パスワードを是非教えて下さい! (9月17日 7時) (レス) id: dc8dec8862 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして。最近この作品と出会って一気に読ませていただきました。続きはもう読めないのでしょうか? (7月14日 10時) (レス) id: 222fa2acf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:jiu. | 作成日時:2019年6月2日 20時