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『どうだった?』

玄関を締め部屋に入ってきた紗羽がぎこちなく笑う

「聞こえた?」

『うん、大体は。途中声小さくて聞こえなかったけど…』

「そか、」

そう呟いて腰を下ろす紗羽の顔は少し青ざめていた

『岩くんと広臣くん、何か言ってた?怒ってなかった?』

「怒って無かったと思うよ。」

『ごめんね、ありがとう…』

「気にしなくていいって!あ、店長から貰ったケーキあるんだよね!」

そう言って立ち上がり台所へ駆け寄る紗羽の姿を目で追う。

煮え切らないこの感情を燻らせたまま私は家に帰れるだろうか。

私の鞄の奥にはあの写真が眠ってる。

衝動的に鞄にい入れたあの写真を、もう一度眺めれられる自信が無い。

「、A?」

突然名前を呼ばれ我に返ると、台所からこちらを見る紗羽

『へ?』

「…チョコとキャラメルどっちがいい?」

『あ、キャラメル』

キャラメルね、と言って背を向ける紗羽をぼんやりと見つめる。

『…』

お盆を持って振り向いた紗羽と目が合い、ぎこちない笑みを返す。

お盆を持って戻ってきた紗羽が、襖を閉め再び向かいに座る

『美味しそう…いただきます…』

お洒落な皿に乗せられた可愛いケーキを口に運ぶ

「何か、上品な甘さって感じだね!」

ケーキを頬張る紗羽は、無邪気で可愛らしくて綺麗だった。


最初は、猥雑とした台所や、色がくすんだ壁紙が、紗羽には似合わなくて。

本当に紗羽はここに住んでる?

なんて馬鹿げた疑問が頭を過ぎったりもした。


けれど。


埃っぽい蛍光灯の光、油汚れでベタつくガスレンジ、嫌な音を立てて回る換気扇、紗羽には似合わない、相応しくないものを当たり前のように使いこなすその背中を見つめて、



私は、確かに、少し安堵した。



フォークを掴む指先が微かに震える。

顔を上げることが出来ず、視線を落とす。

「A?大丈夫?」

『っ、うん』

紗羽に顔を覗き込まれ、心臓が跳ねる

「……心配しなくても、大丈夫だよ。岩田さんと登坂さんには、Aが今日あたしの家に泊まること伝えたし、分かってもらえたから。」

『…うん、…ごめん、ごめんね…』

「だからー、気にしなくてもいいって」

『ごめん、』

じわりと滲んだ涙に、紗羽が優しく頭を撫でてくれる

「もー、大丈夫だって!」

違うの、紗羽

私、紗羽に対して本当に最低で、酷いことを思った。

『っ、…ごめんっ、』

弱虫で臆病で最低な私は、

『ありがとうっ、』

優しくされる資格なんてない

▽→←少女Aの護衛



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happytaimama(プロフ) - 今晩は。こちらの作品何度も読み返して読ませてもらっています。続きを読みたいので、パスワードを教えていただけますか?宜しくお願いします。 (2月16日 18時) (レス) id: 4f1df4c5a4 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 感動しました。 (2020年12月16日 14時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - もう更新はないのでしょうか……? (2019年1月25日 23時) (レス) id: 5703e26db8 (このIDを非表示/違反報告)
м i i(プロフ) - 続き楽しみにしています!! (2018年12月28日 1時) (レス) id: 223aa4411e (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 待ってますすすすby mj (2018年12月24日 18時) (レス) id: 866e6acc2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:jiu. | 作成日時:2017年11月22日 11時

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