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ページ44

隆二 side

「おい待て、死にたがり!」

『触んじゃねぇよ!』

掴まれた腕を振り払う。

「…拾ってくれてありがとな!」

『…てめぇ俺の肋骨折ってんんだからな、忘れんなよ』

朗らかに言う男にうんざりしながら呟くと、

「…てめぇこそ人の車傷つけてんの忘れてねぇだろうな」

無表情に戻った男が低く唸るように言った。

「まぁまぁ、落ち着いて!ここ商店街だから!」

『…』

「久しぶり、死にたがりくん」

傍観してた男達の中から突然間を割って入ってきた男。

視線を移すと、男は見覚えのある端正な顔に笑みを浮かべた。

「どこかでくたばってるかと思ったら、生きてたんだ」

『…』

「まだ、殺してくれる奴探してんの?」

『黙れ』

「…そんなに死にたいならさ、誰かに殺されるまで生きてみない?」

『…』

「俺らの仕事結構スリルあるよ?」

『ふざけんな!誰がてめぇらなんかと、っ、』

「だからここ商店街だっつの。大きい声出すなって。サツ来るよ?」

声を荒らげた俺の治りかけの肋骨に、軽く拳を入れる男を睨むと

「困るの俺だけじゃないでしょ?」

そう言って笑った。

「ムショと院あがりには辛い世の中だよな」

わざとらしく息を吐いた男に、拳を握りしめる。

「…死にたがりくんさ、シャブ中と借金まみれの奴ら嫌いでしょ?」

『っ、』

「そういう奴痛い目見せたくない?」

『何言ってんだてめぇ』

「ゴロゴロいるよこっちの世界は。借りた金でシャブ食って潰れる馬鹿ばっか。」

『…てめぇらが食わせてんじゃねぇのかよ』

俺の言葉に目を細めた男が、小さく口を歪めた。

「そこらのザコ組と一緒にすんな。こっちは命懸けで凌ぎ削ってんだよ。」

暗く光る瞳に睨まれ、息を呑む。

「だから、俺らの会社、死にたがりくんにはぴったりだと思うんだけど?」

「悪くないと思うよ?良くもないと思うけどね」

『…』

そう言った後、商店街の時計に目を移した男が、慌てたような声をあげる

「うわ!もうこんな時間!早く戻らないとやばいですよ!飯遅れる!」

「俺はお前が一番やばいと思うぞ…」

「さっきから冷や汗よ、俺」

隣で黙り込んでいた男達が呟く

「またな!死にたがりくん!…あ、お前、車の修理代まだ払ってないよね?…仕事選んでる暇あんの?」

修理代、金借りてでも払ってもらうから。

その世界の人間の目でそう言葉を残し、背を向ける男。

『…』

商店街を後にする男達の背中を見つめ、逆方向に歩みを進めた。

▽→←どうやら人は



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happytaimama(プロフ) - 今晩は。こちらの作品何度も読み返して読ませてもらっています。続きを読みたいので、パスワードを教えていただけますか?宜しくお願いします。 (2月16日 18時) (レス) id: 4f1df4c5a4 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 感動しました。 (2020年12月16日 14時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - もう更新はないのでしょうか……? (2019年1月25日 23時) (レス) id: 5703e26db8 (このIDを非表示/違反報告)
м i i(プロフ) - 続き楽しみにしています!! (2018年12月28日 1時) (レス) id: 223aa4411e (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 待ってますすすすby mj (2018年12月24日 18時) (レス) id: 866e6acc2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:jiu. | 作成日時:2017年11月22日 11時

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