衝撃と剥離 ページ1
響くアラーム音にゆっくりと目を開ける。
ー6時32分ー
ゆっくりとベットから降り、カーテンを開ける。
昨日の夕方に啓司くんからもらったパンは、結局部屋のテーブルの上に置いたままだった。
眩しい朝日が部屋に入り込み、思わず目を細める。
私服に着替え、カバンに教科書を詰めて、部屋を出る。
大広間へ続く廊下を歩いていると、途中の廊下から曲がってきた人とぶつかりそうになった。
｢っ、ぶねぇ…A…｣
『っ、』
花瓶を両手に持った岩くんが、少し困った顔で私を見下ろしていた
｢ごめん、ぶつからなかった？｣
岩くんの言葉に小さく頷くと、彼の手の中にある花瓶を見つめる
黄色い菊の花が目に刺さり、花瓶を持つ腕の持ち主に僅かな怒りを覚えた。
なんで平気な顔して、仏花の水変えしてるの。
『貸して』
｢え、｣
奪うように花瓶を取る私に、岩くんが目を丸くする
『私が戻しておくから大丈夫、岩くんもう戻っていいよ』
｢え、でも、｣
混乱しながらも食い下がる岩くんを見上げて、その端正な顔を見つめる
『私が、戻すから、』
だから触らないで。
飲み込んだ私の言葉を察したのか、岩くんが瞳を伏せる。
そして、
｢…Aさ、｣
顔を上げた岩くんの瞳は寂しそうで、そして、少し冷たかった。
『…ごめん』
何かを言いかけた岩くんから逃げるように横を通り抜け、そのまま仏間へ入る。
線香の匂いが鼻をつき、咳き込みそうになった。
花瓶を所定の位置に戻すと、目に入った３本の線香に苛立ちがこみ上げた。
『……』
仏壇の前に座り、遺影の中から笑いかけるお父さんとお母さんを見つめる。
その横に置かれた薄汚れたアルバムに無意識に手が伸びた。
躊躇いながら、裏表紙を捲る。
『っ、』
一番後ろのページにしまわれたその写真に、息を飲んだ。
『これ…っ、なんで…』
震える指でその写真を抜き取る。
心臓がドクドクと音を立てていた。
『っ、』
廊下からこちらに向かってくる誰かの足音が聞こえた
急いでカバンの中に写真を閉まった。
カバンを手に立ち上がり、大広間を素通りして玄関へ向かう。
｢A！？｣
誰かの声が廊下の向こうから聞こえたが、構わず玄関の戸を開け、外に飛び出した。
この家にいることが嫌だと思った。
行ってきますを言わず家を出たのは初めてだった。
坂道を下りながら振り向くと、立派な門が私を見下ろしていた。
息を切らしながら見上げたその家は、全く知らない人の家みたいだった。
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happytaimama(プロフ) - 今晩は。こちらの作品何度も読み返して読ませてもらっています。続きを読みたいので、パスワードを教えていただけますか？宜しくお願いします。 (2月16日 18時) (
レス) id: 4f1df4c5a4 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 感動しました。 (2020年12月16日 14時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - もう更新はないのでしょうか……？ (2019年1月25日 23時) (レス) id: 5703e26db8 (このIDを非表示/違反報告)
м i i(プロフ) - 続き楽しみにしています！！ (2018年12月28日 1時) (レス) id: 223aa4411e (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 待ってますすすすby mj (2018年12月24日 18時) (レス) id: 866e6acc2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：jiu.
| 作成日時：2017年11月22日 11時
