幼馴染の彼は、私にだけ冷たい。《黒》

冷たい…10 ページ10

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「ちょ、なんで急につけてんの…？」

「証拠」

「…なんの？」

「…捨ててない証拠」







彼は、ことごとく不器用。

そんなの、捨ててないよって素直に言えばいいだけの話なのに。

それに、さっき私の問いかけにちゃんと首を振ったんだから。



ほんとに、意味のわからない人。







「別にそんな気使わなくても」

「…あのさ、」






機嫌が悪そうで、この清々しい空に合わないれんの低い声が私の耳をすり抜ける。

小さく相槌をうてば、れんはさっき蹴った壁をすらすらと撫でて、しゃがみ込んだんだろう。


少し揺れた壁。

しゃがみ込んでこの薄い壁に寄りかかるれんが、どんな気持ちでどんな表情しているかなんて分からないけど、私は少しゆったりした気持ちで目を閉じて空を見上げた。







「…なんか俺、おかしい」

「そんなのいつもでしょ」

「……分かんないならいーや」







れんの言った言葉をどんなに噛み砕いても分からなかった私は、少しだけ罪悪感を抱いて、手すりに腕を乗せる。

その上に顎を乗せると、少しだけ目線が前になって、さっきまでは見えなかった青い空も広範囲で見えるようになった。







「…私は一生れんの気持ち、分かんないよ」

「…」







私をどんな気持ちで見つめて、どんな思いで接してるのかなんて、一生分からない。

れんはまた、ひとつ深呼吸をして私の言葉を無視した。







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