17 ページ18
ヒーロー。
それをAが知ったのは空漠たるその体質が個性によるものである、と定義付けされ社会において他に害をなすものでないと証明された折であった。
まるで鉱物を掘り出して作られた石像であるかのような構造。脳も無いのに思考し声帯も無いのに言葉を話し失った部分を補填し直す、決して人とは言えないその生命体の管理を怠ることは出来ない。だがその力を他のために使うことで自分の“安全性”を示していけばある程度の自由は保障されるだろう、と担当研究者はAに提案した。
どれだけ検査しデータをとり考察をしても人間にAの正体は掴めなかった。時間がかかりすぎた。Aの調査にかけられた費用は莫大なものであったが、その費用に釣り合う程の成果は出せなかった。手に負えなかったのだ。
目的はない。自分が異物であるのをわかっているが除くことも馴染むこともない。ただ自分と同じ宝石たちがこの世界にいるかもしれない。ただ、会いたい。
そんなAに差し伸べられたヒーローという道しるべにすがらないはずはなかった。
その日、今までアクアマリンと呼ばれたそれは結輝Aという名前と日本国籍、ヒーローになるための教養と戦闘訓練の機会を与えられた。
ヒーローになりたかった。
人を助けることで注目を浴び、名誉と地位をものにできるそれが仲間を探すのに効率が良かったから。
悲しくもすぐに死んでいく弱い人間を慈しむその役割が自分に合っていたから。
Aの奥に根付いていた陳腐なヒーローへの思いが、今崩れ去る。
ショック吸収に超再生、というアベレージを持った敵に真正面から打ち合う。血を吐き、ボロボロになりながらオールマイトが叫ぶ。
｢ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの！｣
｢敵よ、こんな言葉を知ってるか!?｣
Plus ultra!!
いつもどこかで感じていた。どれだけ極悪な敵も素晴らしいヒーローも結局は死に絶える。可愛そうなイキモノ。Aは自分を捕らえ何度も砕き削り直してまた破壊し、生き続けるため調べ上げ脅威となりうる可能性があるため隔離する、人間に嫌気がさしていた。どれだけ外見を取り繕っても不信感はずっとそこにあった。
だが、Aは焦がれてしまった。
命を燃やして戦うヒーローに。
自分もそうなりたいと思ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 288人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかや - とても面白かったです！更新待ってます〜！ (2020年12月15日 13時) (
レス) id: 51d8bbe764 (このIDを非表示/違反報告)
ぱすてる - とてもよかったです(´；ω；｀) (2020年4月19日 18時) (レス) id: d34f4e9add (このIDを非表示/違反報告)
八百(プロフ) - みんなが名前を呼んでるとこでちょっと涙出ちゃいました…更新待ってます！ (2019年3月29日 21時) (レス) id: db047f61b6 (このIDを非表示/違反報告)
音春(プロフ) - 更新頑張ってください！(受験勉強も) (2018年12月1日 17時) (レス) id: f210cca1fd (このIDを非表示/違反報告)
星を見守る砂岩(プロフ) - すごく面白いです！更新頑張ってください！ (2018年11月16日 21時) (レス) id: 5a8ebe94bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さも | 作成日時：2018年2月9日 2時
