テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ5)

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２１５．後悔。ページ5

あの時私は好きという気持ちを封じ込めただけであって、嫌いになったわけじゃない。

だったら尚更こうやって再会できると心臓がうるさくなるのがわかる。

全身の血が体中に流れていくのを感じた。

「ずっと…会いたかったのに…」
「うん」
「連絡だってしてくれてもよかったじゃない…」

どうにかすれば私に何かしらのメッセージくらい送れたと思う。

突然的な別れはすべて奪っていった。

「ごめん、出来なくて。」

今も尚、この智くんの姿が幻覚なんじゃないかって半ば思う。

それほど信じられず、ありえない光景だった。

「あの時の私…大変だったんだから。」

不意に襲われる苦しい気持ちに押しつぶされながら、痛めつけられながら何度も名前を呼び何度も後悔した。

出会った頃からの運命と思うと尚更心が窮屈になった。

「ごめんな、本当に。」

智くんはそう言って私をやさしく抱きしめてくれた。

何も知らない智くん。

この手を振り払わないといけないのに、この空間に収まったらダメなのに。

居心地がいいと、私の体は穏やかになる一方だった。

その時、あの声が聞こえてしまったんだ。

「A…ちゃん…？」

彼の不思議そうな声が遠目から聞こえた。