テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ34)

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３４４．ちぐはぐ。ページ34

盗み聞きをしていたテンチョーは部屋へと入ってきた。

「今日はバイトの子もたくさんいるし、人員がなぁ…」
「え？」
「悪いけどAちゃん、今日は早上がりをお願いしてもいいかな。」
「え…」

もう何といえばいいかわからないくらいテンチョーの優しさに頭が上がらなかった。

「あーー、もう俺明日の仕込みしなきゃー！忙しーー！」

テンチョーはその言葉を残して急いで階段を駆け下りた。

人員は足りてるのに忙しいなんて全くちぐはぐなこと言ってるけど、それがちょっとテンチョーらしい。

「テンチョー…ありがとう…」

ロッカールームでそそくさと服に着替えて、足早にパレットを出た。

テンチョーの優しさが本当に身に染みる。

家にいるであろう和也くんに会うなんてどうやって会えばいいのかわからない。

私は道を引き返してパレットでケーキを買った。

今の時期おすすめのリンゴのタルト。

和也くんと一緒に食べれたらと、手土産を持って和也くんの家の最寄り駅まで電車に揺れる。

居るかどうかの確認もしてないけど、もしかしたらしないほうがいいかもしれないってのもちょっと思った。

和也くん…元気にしてるかな。