テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ30)

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３４０．リード。ページ30

携帯をにぎりしめたらいいものの、彼のスケジュールを把握している訳でもない私はどんな言葉でメッセージを開始すればいいかわからなかった。

テンチョーに促され、気持ちは軽くなったけど解決には至っていない。

｢どうすれば…｣

2時から3時の売れ時の時間が過ぎた頃、カランとドアの音が鳴った。

｢いらっしゃいませー｣

ほぼ反射的にお客様の顔を見ずに出てしまう言葉。

そのまま私はショーウィンドウを拭いていた。

｢あの、｣
｢はい、……相葉さん…｣

鼻につくようで柔らかい声の正体は相葉さんだった。

なんとなく、相葉さんと会うのにも緊張が走った。

｢ご無沙汰しております。｣
｢こちらこそ…ご無沙汰しております。｣

よそよそしい私とは反対にいつもどおりの優しい笑顔の相葉さん。

そんな相葉さんに救われた気がした。

｢Aちゃん｣
｢はい、｣

裏の方からテンチョーの声がした。

｢屋根裏部屋使いな、特別に業務として数えてあげる。｣

テンチョーはそう言ってまた力仕事に戻った。

テンチョーの優しさには頭が上がらない。

｢青鹿さん、少しお時間ございますでしょうか。｣
｢はい、大丈夫です。｣

テンチョーからの返事を聞き、相葉さんは会話のリードを持った。