テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ27)

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２３７．喪失感。ページ27

お互いご飯を食べ終わり、私はお礼も兼ねて食器を洗った。

その間智くんは荷物をまとめていた。

｢1泊世話になったな。｣
｢こちらこそだよ、いろいろとごめんね。｣
｢気にすんな、俺はとりあえず実家に帰るよ。｣
｢うん、わかった。｣

変わっていなかった番号をもう一度端末に登録したけど、きっともう使わないものだと思った。

そんなものを引きずりながら過ごすなんてなんだかちょっと儚い気持ちを感じた。

「またがあるかはわかんねぇけど…」
「ん…そうだね、」

智くんは決心を決めたようにドアを開け、手を少しだけ挙げて出ていった。

なんというか、静かな部屋に戻ったことに喪失感を覚えていた。

これからどうするかなんて私が決めなきゃいけないことで、智くんに助けてもらってばかりは気が引ける。

これは私自身の問題であり、乗り越えなければいけない壁だと思った。

・

しばらくしても答えは見つけることができず、連絡さえも取れずにいた。

いや…取る勇気がない。

彼がどう思っているかわからないからこそ、彼からも音沙汰がないからこそだった。

「最近そんな顔ばっかりだね。」

休憩時間中、テンチョーが私の目の前にケーキを持ってやってきた。