テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ18)

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２２８．林檎。ページ18

智くんが何かを作っている間に私は寝室で服を着た。

服を着てリビングへと戻ると智くんは完成した料理をもってローテーブルの前に座っていた。

「食べな」
「あ、これ…」

あの頃、智くんに作ってもらっていたもの。

あの頃、私の大好物だったもの。

煮詰めた林檎のソースを市販のバニラアイスにかけるっていう至ってシンプルなスイーツだけど、智くんが作る絶妙な味加減がとっても好きだった。

「しんどい時は冷たくて甘いもんが有効だから。」

そう言って智くんは私にスプーンを手渡した。

何も言わずとも私の右側に居てくれているのは本当にうれしかった。

「いただきます。」

あの頃の記憶が一瞬でよみがえる。

口に含めばあの時と同じ甘く香ばしい林檎を感じた。

「懐かしいね、やっぱり好きだな…」
「これ、ホント好きだったよな。」
「うん、大好きだった。」

ほかの人が作ったものじゃ、多分いまいち違うと思う。

智くん特製のこれが一番最高だと思う。

「ねぇ、智くん」
「ん？」
「さっきの私の質問、答えてほしいな。」

何かを悟ったあの時の智くんの独り言。

きっとその真意は智くんが留学した理由も含まれているんだと思う。

「そうだね、結局は話さないといけないことだから。」

智くんはすぅと息を吸った。