【夏目友人帳】猩々緋 (ページ6)

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紫苑Aside

物心つく頃には、父も母も家にいなかった。いたのはクソほど腹の立つジジイだけ。

『ただいま。』

「随分帰りが遅かったじゃねーか。何だぁ？デートか？…ったく、餓鬼が色気付きやがって。」

『はあ？！違うし！何勝手に妄想してんの、気持ちわるい。』

「それがジジイに対する発言か！年寄りを労れ！」

『アンタみたいに元気なのは労らなくても良いんですー。』

「なに？！」

『じゃ、勉強するから部屋入ってこないでね。』

「ちょっ、待てA！！話はまだ────！！」

襖を閉めた後、「封」と書かれた札を貼る。そうするとジジイの声も一切聞こえなくなり、部屋は途端に静かになる。

『夏目レイコ…』

今日出会った妖が言っていた、見える人。名前からして、きっと女。何歳くらいなのかな…ていうか、そもそも生きてるのかな。生きているなら会ってみたいな…なんて。

『まあ、それより問題はこっちか。』

そう呟いて、机の上に置いてある手紙を見る。こんなもの、家を出る前は置いていなかった。

的場、と書かれているその手紙を不本意ながらも開ける。

『ていうかこれ、普通に不法進入じゃないの？』

会合への誘い。半ば脅迫のようなそれは、悪夢の始まりと言ってもいい。呼んでくれだなんて頼んでいないのに、本当に迷惑な話だ。

『…うっざ。的場マジうっざ。…ほんと死ねばいいのに。』

「随分な言われようですね。」

『はあ？！』

背後から声が聞こえた。振り返ってみても、そこには誰もいない。

…幻聴？

『…はあ、ほんっと面倒。』

そう呟いて、もう一度手紙を流し読みした。

そして気付いた。

『日付け書いてないし…！』

これは多分、お前から出向けっていう事なんだろう。

的場誠司。どこまでも面倒で、うざったくて…そしてどこまでも、残酷な男。