【夏目友人帳】猩々緋 (ページ4)

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三ページ4

紫苑Aside

「人の子よ、私が見えるのか。」

そう言ったお爺さんの様な妖をちらりと見た後、素早く携帯をポケットから取り出して耳に当てた。これも、もう慣れた作業のうちの1つだった。

『見えるって言ったら、どうするの？』

「ほほ、私が見えるだなんて。面白い人の子よなぁ。」

『ねえ、アンタ暇なの。』

「ああ、暇だなぁ。」

『じゃあ、私と勝負しない？』

「…お前は、レイコの様な事を言うのだな。」

『レイコ？誰それ、アンタの知り合い？』

「彼奴もまた、私が見えた面白い人の子たった。」

妖が見える人。この妖が言うその人は、きっと祓い屋か何かだろう。そうじゃ無い限り、例え見えたとしてもむやみやたらに妖に近付いたりしないだろう。少なくとも、私はそう思っている。だって、家が祓い屋なんかじゃなければ、私はこうして妖に近付くことなんて無かったから。

そう。つまり私は、妖が嫌いだ。

『ふ～ん。で、勝負すんの？しないの？』

「暇潰しだ。人の子よ、何をする？」

『小指を出して。』

「ふむ。」

『その小指で私の小指を握って。』

「どれ、これで良いのか？」

『うん。そのまま、私が“いいよ”って言うまで離さないで。』

「あいわかった。」

『我汝と契りしこれを、人に危害を加えぬとする。
“指切り拳万、嘘ついたら針千本飲ます、指切った。”』

目を瞑って、言葉に全てを込める。

『はい、“いいよ”。』

「なに、勝負でもなんでもない。…ただ、どうしたのか…肩が重いのぉ。」

『御愁傷様～。じゃあね。』

妖が消えて行く様に森の方へと還って行った。それを見届けてから、近くにあるベンチに腰を下ろした。

『…はあ。』