【夏目友人帳】猩々緋 (ページ15)

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十四ページ15

名取周一side

都会から離れた田舎。その田舎からも更に離れた人気の無い森の奥。そんな場所を、的場は今回の会合の開催地として選んだ。私が少し息を切らしながら歩く中、流石と言うべきか学生である二人は少しも息が乱れていない。勿論、夏目の肩に乗るブタネコもだ。

「学校に行ってないのか？」

『…別に。』

「勉強はしてるの？」

『…別に。』

「別に、じゃ分からないよ。」

『勉強とか、そんなの必要ないし。』

そんな事を少し前に話していた二人。Aは祓い屋という以外は、ただの美少女ヤンキーだ。素行が良いとは言えないし、口だって中々悪い。まあそこが可愛くもあるんだけど。

まるで夏目は家庭教師でもする様に、山を登りながらAに数学の問題を出し続けている。数学の問題といっても、とても簡単なものだった。このレベルの問題も分からない程Aは頭が弱かったのか。ついクスッと笑みを溢した私をAが恨めしそうに睨むから、私は何だかとてもおかしくてか、やっぱりクスッと笑ってしまう。

「違うよ、1xの1は省略するんだ。」

『じゃあ、2x－xって2－1ってこと？』

「そうそう！Aは教わった事はちゃんと理解出来るんだから、ちゃんと学校に行けばいいのに。」

夏目のその言葉に、Aがふと立ち止まった。

『…楽しくないから。』

「え？」

『別に妖関係でいじめられてるとか、そういうのは無い。普通に話しかけてくる奴はいるし、遊びにだって誘われる。』

「それじゃあ、どうして…？」

『…いくら仲が良くても、やっぱり私はみんなと違う。視界に広がる光景も、過ごす世界も、求められる祓い屋としての実力も。みんなと違う。』

「A…。」

『私はきっと、普通にはなれない。普通じゃなくて良いって言って私を認めてくれるのは、結局あのジジイだけ。』

そう言って再び歩き始めたAの腕を、夏目が引き止める様に掴んだ。

「あのさ、Aが今さっき言ったジジイって、もしかして────」

夏目が何かを言い終わる前に、つい私が声を出して遮ってしまった。

「さあ！そろそろ着くんだから、気を引き締めていかなくちゃね。会合には悪い祓い屋だって沢山いるんだから、Aも夏目も気を付けるんだよ。」

ごめん、夏目。悪かったよ。頼むからそんな顔で私を見ないでくれよ。