東方フローリスト4～U-Know&Changmin (ページ12)

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営業先で、花束は好評だった。

「あー、いいにおいだ！春だねえ」

ちょっとお堅いと思っていた社長さんも、顔をほころばせている。

「よかった、喜んでいただけて」

「うちは男が多いからね、なかなか花を飾ろうって気分にはならないんだよね。
　事務の子には申し訳ないけど、殺風景な職場になっちゃってる」

心なしか、事務の女の子も楽しそうだ。

「五十嵐のやつ遅いな。すまんね、突然クレームの電話が入ってしまってそっちに行ってるもんだから」

「いいえ、こちらは急いでないので大丈夫ですよ」

社長と話していたら、五十嵐さんがあわてたようすで部屋に入ってきた。

「すみません！遅くなってしまって」

「いえ、そんなに待ってないですから」

「ほんとに申し訳ない」

ちょっと落ち着いてから、あれ、と五十嵐さんは言った。

「ここ、いいにおいですね」

「お花の香りです。ちょっと時間あったので、私からのプレゼント」

「うわ、ありがとうございます。うーん、いいにおいだ」

私より2歳年上の五十嵐さん。

元気な人で、どんなに忙しくてもいつも笑顔で応対してくれる。

引き受けた仕事にはストイックなまでに取り組む人だ。

目の前で鼻をくんくんさせている様子は、どう見ても子どもだけど・・・

「あれ、中山さんなんで笑ってるの？」

五十嵐さんて、こういうとこあるんだ。

初めて知った彼の一面に、私は笑ってしまった。