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「・・・うそ」
私は家のトイレで呆然としていた。
手にはチェッカー。
くっきりと縦に線が浮かび上がっている。
「え、・・どうしよ」
わけもなくオロオロしてしまう。
まずは産婦人科だよね・・・
私は急いで近所の産婦人科を探しだした。
☆
「あ、タク！」
夕方待ち合わせたカフェで、私は彼に手を振った。
「よ、ごめん遅くなった」
「え、そんな待ってないよ」
片手で”ごめん”のジェスチャーにしながら、
タクは椅子に腰掛けた。
「会うの久しぶりだよね〜」
「そうだよなあ・・ごめんな、オレの仕事が忙しくて」
「いいよ、わかってるから。今日は会えてうれしい♪」
「うん。・・・あ」
タクがスーツの胸ポケットのあたりを探っている。
ぶるぶると震える携帯電話を取り出した。
「ちょっとごめん、電話出てくる」
電話を持って、タクはお店の奥のほうへと小走りで向かった。
タクになんて言おう？
私はとてもうれしいんだけど・・・
タクは喜んでくれるかな？
窓の外を見ていた私の所へ、電話を終えたタクが戻ってきた。
「真由、ごめん」
「え？」
「仕事でトラブった。これから戻らなくちゃいけないんだ」
「あ、・・・そうなんだ」
「ごめんな」
そう言うと、注文したコーヒーには全く口をつけずに、
タクはテーブルに置いてあった伝票を持って、また小走りでレジへと向かった。
・・・うそお。
今日はこれから私の家に行って、エコー画像を見てもらおうかなって思ったのに・・・
さっきまでのうきうきした表情とは違う、
悲しいような怒ったような表情の私が窓ガラスに映っている。
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作者名：sai-sai
| 作成日時：2016年9月21日 22時
