恋心は偽らない【黒羽快斗】

９話 ページ9

．


そのあとしばらくは、母は色んなことに追われていた。毎日とても忙しそうだった。

とりあえず学校は行きなさいと言われたので、お葬式が終わってからは普通に登校していた。


学校の友達とは変わらず遊んでいて、授業もいつもと変わらずきちんと受けていた。

けれど、一つ変わったことがあった。
わたしたち家族をみて、近所に住む人たちが何か話しているのだ。



『Aさんとこのお父さん、殉職なさったんですって』

『まだお子さんも小さいのに、大変ね』

『可哀想』



そんな日々がしばらく続いた。

…すると今度は、母がおかしくなっていった。
こんなことを、口にするようになった。


『お父さんは、警察に殺された』


父は勤務中に事件に巻き込まれただけで、警察の人達は何も悪くなかった。
けれど、よほどショックが大きかったのだろう。
いつしか母は、警察を憎むようになった。


わたしはそんな母が、壊れていく母が怖かった。
うつ状態になり、薬を処方され、部屋は汚く、料理もまともに作らない。
母がわたしに手を上げることはなかったけれど、話をすることもなかった。



ある日わたしが学校から家に帰ると、大量の睡眠薬と零れた水、太いロープ、

そして、ぐったりと横たわる母がいた。


母は、自らを絶とうとした。
未遂に終わったけれど、あまりに薬の量が多かったのか、入院先のベッドから目覚めることはなかった。

小学生の子供であるわたしは、1人で生活出来ないから親戚のおじさんおばさんが、面倒を見てくれることになった。


わたしはもう、これからどうすればいいか分からなかった。

友達に別れを告げ、おじさんとおばさんの2人が待つ、ここからけっして近くはない家に引っ越し、転校した。


このときのわたしには、もう何も残っていなかった。







．


実は今日、ようやく紺青の拳を見に行けました！
1ヶ月間バイト漬けで見に行ける日がなかったのですが、頑張ってよかった…めちゃめちゃ良かったです……

モチベーション上がったのでこれからも更新頑張っていきます！





．

１０話→←８話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す