8話 ページ42
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「…落ち着いたか?」
あれから数十分。
泣きじゃくった彼女が、隣に座っている。
今までのことを、思い出していた。
昔、一度だけ会った女の子に再会した、あの日。恋を自覚した、あの日。
思い出の中でいつも笑顔だった彼女は、ずっと無理していたのかもしれない。
そう思うと見ていられなくて、抱きしめた。抱きしめて、泣いていい、って。
そうしたらAは泣いた。子供みたいに、今までの全部が溢れてきたみたいに。
思いっきり泣いたAは、目を腫らしていて痛そうだ。
じっと見ていると、ばっちり目が合った。
気まずそうに目を逸らしたあと、何か考えている様子だ。
…ああ、いいかげん言わなければ。
意を決して、Aの方に向き直る。
自分が緊張しているのがなんとなく分かったから、にっと笑って。
「今、Aが考えてること当ててやろーか?
…何で怪盗キッドがいると思ったら俺が出てきたんだ、とか」
Aはえっ、と声を漏らした。ビンゴだったらしい。
「バーロー、だいたい分かるわ」
…お前のこと、ずっと見てたんだから。
そんなことは言えなかった。
「今日はな、俺も打ち明けに来たんだよ」
目を逸らしてしまった。嫌われないか、不安だから。
けど、それならそれでいい。口を開いた。
「俺、怪盗キッドなんだ」
「…っへ、ええ!?
今まで夜に会ってたのも、快斗くんだったのか…」
騙していた罪悪感が押し寄せる。
しかしAは、そういったことあまり気にしていないようだった。
「…けど、言っていいの?
怪盗って、ミステリアスなのが魅力的なんじゃなかったっけ」
以前、怪盗キッドとして会った時に言った言葉。正直恥ずかしいからやめてほしい。
「なんでんな事覚えてんだよ…
そのミステリアスさを貫きたかった俺が正体バラして言ってんだよ、ちったあ察しろ」
ああ、素直に言えればなあ。
そう思ったけど、どうやら察しのいいAは、顔を赤くした。
「…あー、そうだよ
おめーのことが、Aのことが好きなんだよ」
じっと見つめる。もう吹っ切れた。全部言おう。
「好きだから、隠しごとしたくねぇと思ったんだ
Aが俺に打ち明けてくれたみたいに、俺も言おうと思ったんだ」
俺だけAを騙したまま、ずっとそばにいるなんて耐えられなかった。
全部打ち明けて、その上でちゃんと告白したかったんだ。
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みすと(プロフ) - わあああ返事遅くなってすみません(;; ) わたしも見ました、何回みても最高ですよね… こちこそ読んでくださってありがとうございます! (2020年4月24日 13時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
なな@鬼滅あんスタ(プロフ) - 昨日のロードショー見て来たのはうちだけじゃないハズ((((作者さんありがとうございます... (2020年4月18日 9時) (レス) id: 967fb8e362 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 加々知 零さん» 黒羽快斗くん夢、書くのとても楽しかったです(つω`*)小説読んでくださりありがとうございます! (2019年7月2日 22時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
加々知 零 - 。゚(゚´ω`゚)゚。快斗×夢主がヤバイよぉぉお!! (2019年7月2日 21時) (レス) id: b33ef74fc2 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 最後のセリフは絶対これで終わろう!って考えていたのでそう言っていただけて嬉しいです!本当に読んでくださり感想までお聞かせくださり、ありがとうございます!また何か書き始めたら覗いてってください(^^) (2019年5月31日 19時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みすと | 作成日時:2019年5月8日 21時