恋心は偽らない【黒羽快斗】

１５話 ページ15

○


「ねえA、Aってば！」


授業が終わってぼーっとしていたら、移動教室から戻ってきた園子ちゃんが興奮気味にやってきた。


「わ、園子ちゃんやっほ
どうしたの？」


「どうしたもこうも！怪盗キッドが、予告状を出したのよ！」


「へぇ、怪盗キッドかあ」


怪盗キッドといえば、数週間前に公園で会ったことを思い出すなあ。
あのとき貰ったうさぎの形をしたハンカチは、いまもそのまま飾っている。

返した方がいいよなぁ、けどどうやって返そうか。


「うーーーん」


「何よA、難しい顔して！」


眉間を人差し指で攻撃された。痛い。


「園子ちゃんはファンだから嬉しそうだね」


「ええもちろん！あーんキッド様！」


園子ちゃんはキッド様にぞっこんである。

今まで聞き流してきた話だけど、本人と会話したりしちゃったもんだから、ちょっと興味がわいてきた。


けど今は、それどころじゃないんだよなあ。
わたしは持ってきた通帳をぴらっと開く。

…わたしの生活が、かなりヤバくなってきた。


わたしの父は亡くなってるし母もずっと入院しているから、奨学金とか生活費の補助とか多少はしてもらえたりするんだけど、それでも限度ってものがある。

おじさんおばさんの仕送りみたいなものとか、両親の貯金を切り崩しながらなんとか生活してきたけど、いいかげんちゃんと考えなくては。


…もう一人暮らしにも慣れたし、アルバイトとかしようかなあ。


「A、帰ろー…って、どうしたの？」


「蘭ちゃん…」


わたしは通帳を鞄にしまって、蘭ちゃんに泣きついた。


「ええっ、ちょ、どうしたのよA！」


「蘭ちゃんんん…」


そろそろ本気でやばいかもしれない。






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