5話 ページ5
○
「きちゃった……」
あのまま放課後まで、午前中以上にぼーっとしてしまって、とても授業どころではなかった。
今は放課後、気づけば1人で『あの公園』に来ていた。無意識。
公園の近くの横断歩道で信号待ちをしていると、ちらほら見慣れない制服を見かけた。
見慣れないセーラー服で、快斗くんが学ランを着ていたのを思い出す。もしかしたら彼の通う学校は公園の近くなのかもしれない。
なんて考えていたときだった。
「にゃあ」
とある猫が1匹、わたしの横を通り抜けて横断歩道に飛び出した。
信号はまだ赤。まずい、と考えるより先に体が動いていた。
猫を追うように足を踏み出したわたしの腕を、誰かが掴んで引き留めた。
「えっ」
突然だったからびっくりして、バランスを崩す。
その隙に、その人は迷わず横断歩道へ飛び出した。
猫をひょいと抱き上げると、その勢いのまま向こう側の歩道へ突っ込んで行った。
車が走っていったあと、青信号になったからすぐさまその人のもとへ駆け寄る。
「あの、大丈夫ですか…って、あ」
猫を下ろしてこっちに顔を上げたその人は、わたしがいま一番会いたくて、会いたくなかった人。
「快斗くん…」
「おめー、何むちゃくちゃやろうとしてんだ」
「ごめん…わたしが行ってたら死んでたかも」
もともと運動能力に自信はない。
考える前に体が動いちゃったのはしょうがなかったけど、引き留めてくれて助かった。
…当の命の恩人、黒羽快斗くんはお怒りでいらっしゃるけど。
「ほんと、怪我してたかもしんねーんだぞ!」
「ご、ごめんなさい」
あまりの勢いにたじろぐ。
快斗くんはお怒りだ。目が光ってる。
快斗くんが助けた猫も、大きな声だったからかにゃあっと鳴いて走っていってしまった。
「ったく、Aに怪我がなくてよかったよ」
そう言ってくしゃっと笑ったと思えば、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
急だったから、そう、急だったから。
さっきまで怒ってたのに、急に笑うから。心臓がドキドキしてやまない。
「…そう言う快斗くんはお怪我をこしらえたようで」
ちょっと変な日本語になったけど、今度はわたしが鋭く目を光らせる。
快斗くんは咄嗟にパッと手を後ろに隠した。
「こんなの舐めときゃ治るって」
「ダメだよ!けっこう擦りむいてるじゃん!ほら、見せて」
そう言って、わたしはカバンから消毒液とか絆創膏を取り出した。
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みすと(プロフ) - わあああ返事遅くなってすみません(;; ) わたしも見ました、何回みても最高ですよね… こちこそ読んでくださってありがとうございます! (2020年4月24日 13時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
なな@鬼滅あんスタ(プロフ) - 昨日のロードショー見て来たのはうちだけじゃないハズ((((作者さんありがとうございます... (2020年4月18日 9時) (レス) id: 967fb8e362 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 加々知 零さん» 黒羽快斗くん夢、書くのとても楽しかったです(つω`*)小説読んでくださりありがとうございます! (2019年7月2日 22時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
加々知 零 - 。゚(゚´ω`゚)゚。快斗×夢主がヤバイよぉぉお!! (2019年7月2日 21時) (レス) id: b33ef74fc2 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 最後のセリフは絶対これで終わろう!って考えていたのでそう言っていただけて嬉しいです!本当に読んでくださり感想までお聞かせくださり、ありがとうございます!また何か書き始めたら覗いてってください(^^) (2019年5月31日 19時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みすと | 作成日時:2019年5月8日 21時