32話 ページ32
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キッドが降りてきたと思ったら快斗くんが姿を現すもんだから、びっくりして動けなくなる。
しかし突然現れた快斗くんはお構いなしというように、歩みを進めてわたしに近づいてくる。
何も出来ず突っ立っていたわたしを、突然抱きしめた。
「へ、?快斗、くん」
突然のことに言葉を詰まらせると、快斗くんがぼそっと呟いた。
「無理して、笑うなよ」
その言葉に、わたしの身体がぴくっと反応する。
「今は、泣いていいんだぞ」
短い、たったそれだけの言葉。
けれど、わたしの中で時間が止まったときから何か、張り詰めていたような糸が、プツンと切れたような気がした。
そして、今まで我慢して
溢れて止まらなかった。
子供みたいに泣きじゃくるわたしを、快斗くんは黙って抱きとめてくれた。
そんな彼に甘えて、わたしはこれ以上ないくらい泣き続けた。
「…落ち着いたか?」
あれから数十分。
すっかり泣きはらしたわたしは、腫れぼったい目をおさえながらうん、と頷く。
小さい頃でもこんなに泣いたこと、なかったかもしれない。
周りの人に心配かけたくなくて、我慢するくせがついてしまっていたのかも。
泣いたおかげですっきりしたわたしは、ようやく思考が整理されてきて落ち着いていた。
ちらっと隣を見ると、快斗くんとばっちり目が合う。
街灯にぼんやり照らされる彼はかっこいいから耐えられず、目を瞑ってしまった。腫れてるから痛い。
わたしは誤魔化すように目をそらして、違うことを考えようとする。
…そういえば、二人で会うとお決まりのようにこの公園に来てたけど、夜に来るのは初めてだ。
夜来たときは、怪盗キッドと会ってたし。
そこでふと思い出した。
怪盗キッドが目の前にいる、と思ったら快斗くんが現れた、さっきの話。
自分のことでいっぱいいっぱいで、考える余裕がなかった。
なんだったんだアレは。快斗くんコスプレでもしてたのか?
うーん、と考えながら快斗くんをじっと凝視していると、快斗くんは口角を上げてわたしのほうに向き直る。
「今、Aが考えてること当ててやろーか?
…何で怪盗キッドがいると思ったら俺が出てきたんだ、とか」
えっ、と声が漏れた。
いや快斗くんマジックは得意だろうけど、心を呼んだりとかはできないんじゃ。
「バーロー、だいたい分かるわ」
わたしがあんまり驚くから、快斗くんに呆れ顔でデコピンされた。
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みすと(プロフ) - わあああ返事遅くなってすみません(;; ) わたしも見ました、何回みても最高ですよね… こちこそ読んでくださってありがとうございます! (2020年4月24日 13時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
なな@鬼滅あんスタ(プロフ) - 昨日のロードショー見て来たのはうちだけじゃないハズ((((作者さんありがとうございます... (2020年4月18日 9時) (レス) id: 967fb8e362 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 加々知 零さん» 黒羽快斗くん夢、書くのとても楽しかったです(つω`*)小説読んでくださりありがとうございます! (2019年7月2日 22時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
加々知 零 - 。゚(゚´ω`゚)゚。快斗×夢主がヤバイよぉぉお!! (2019年7月2日 21時) (レス) id: b33ef74fc2 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 最後のセリフは絶対これで終わろう!って考えていたのでそう言っていただけて嬉しいです!本当に読んでくださり感想までお聞かせくださり、ありがとうございます!また何か書き始めたら覗いてってください(^^) (2019年5月31日 19時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みすと | 作成日時:2019年5月8日 21時