第7話 ページ7
○
「お邪魔します…」
「紹介するよ、こちら阿笠博士」
博士に挨拶されて、あわてて頭を下げる。
子供達はこれから博士の家へ行く予定だったらしく、わたしもどうかと誘われて今に至るわけだ。
道中子供達も自己紹介をしてくれた。みんな知ってるけど、本人からわたしへ言われるのはやっぱり違う。すごく良かった。
「なんて呼べばいいかの?」
「あ、いえお好きに呼んでくだされば…」
「そっか、お姉さんお名前も覚えていないんですね…」
「だったらよー!俺らがねーちゃんの名前考えてやろーぜ!」
えっ?と素っ頓狂な声が出た。
歩美ちゃんや光彦君も元太君からの提案に乗り気なようで、博士は紙とペンを手渡してくれた。
「だってお姉さんの事、名前で呼びたいもんね!」
わたしが紙を見て固まっていると、歩美ちゃんがとびきりの笑顔で言ってくれた。
ま、まぶしい。わたしが感動していると、元太君や光彦君、さらに哀ちゃんも名前の案を出してくれて、わたしは急いで名前を書き留めていった。
「結構たくさん考えたのお」
「どうですか?気に入ったもの、ありましたか?」
光彦君の問いに、わたしは紙をじーっと見つめた。どれもこれも素敵な名前である。
文字の羅列を見つめているうち、ふとひらめいた。
「A…がいいかな
ここ、縦に読むと、ほら」
子供達と博士が紙を見て、おおっと声を上げた。
「いーじゃねーか!」
「決まりですね!」
「じゃあ、Aお姉さんだ!」
きゃっきゃと子供達に名前を呼ばれて、じーんとした。
目の奥がつんとして、泣きそうになるのを必死にこらえる。
「えへ、ありがとう」
A、とわたしも名前を反芻する。
心が暖かくなるのとともに、どこか懐かしい響きだと感じた。
歩美ちゃん達が何度も名前を呼んでくれるから、嬉しくって、もうずっと前からこの名前だったような気がした。
.
「なあ、灰原」
「何? 工藤君」
「あの人、黒ずくめの組織で見たことないか?」
「あんな人、見たことないと思うけど…どうして?」
「いや…あの人、俺が事件現場で推理しても何も怪しまなかったから」
こんな会話をされていたのを、わたしは知らない。
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みすと(プロフ) - リリィさん» 読んでくださりありがとうございます! めちゃ更新遅くてごめんなさい…!必ず続きちゃんと書くので待ってくださると幸いです、、、 (2019年8月20日 14時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ - 気長に待ってます。なので、更新お願いいたします! (2019年8月17日 18時) (レス) id: 14d9286bf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みすと | 作成日時:2019年8月15日 17時