〃 ページ5
間違ってもお前、煙草吸わんかったし。
酒弱いから飲まねえし、野菜好きやし、若干引きこもりでもよく喋る健康的な女やったからね。
「俺が先かと思っとったわ」
「お前な」
野郎二人で歩く。病院帰り。
「大先生目え腫れてんで」
「何を平気な顔しとん」
「なんや」
「我慢することないやろ、今くらいなぁ」
チャラチャラしやがって、俺のAに色目使ってはフラれて。それでアイツが死んで悲しいのか。
俺のA。
おれの。
「なんもないわ、戻っただけや」
「でも結婚しよ思っとったんやろ」
「結婚してもええな、って言った」
「エエわ、もう」
あり、なんか怒らしてもうたか。
何が癪に障ったんだ。
帰るのは、俺の家。
Aが住み着いていただけの、俺の家。あくまで。
後ろ手で玄関のドアを閉めるが、しん、と静まり返っている。俺は最期にも立ち会えなかったので、死んだのではなく、ただ家を空けているだけなのでは？なんて思う。
家。
いや、俺の家。お前のちゃうわ。
夜中の退屈な時間も、口数がない、違和感。
クソ、山奥埋めたろか。
たまらず本を開けば、五行読み終えたところで流し読みに気がついて、入ってこなかった内容をまた目で追っていた。
お前これ、漢字、読まれへんやろ。
やってこの前…なんやったか。
「なぁ、」
なんて漢字間違えたんやっけお前、って。
話しかけそうになって止まる。
なぜ止まった？
やってこの空間に俺しかおらんやんけ。
あれ、そうやった。いつ帰ってくるんやったか。
アホ、もう帰って来おへんわ。
「……」
あ、そうやったか。
『私ね、明日が誕生日なんだよ、知ってた？』
すっかり忘れとったわ。
言い残したお前、Aはフッ、と消えた。
さっきまで喋っていたような気がしていた。
突拍子もない奴だ、と。
あの世でも元気でな。
「1人じゃ、あかんやんけ」
ふぅぅぅ、と震える息を吐いた。
脱力していく。
情報過多の毎日の中で既にお前は、必要不可欠になっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 108人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さかなしょこじゅん - 令霊さん» ありがとうございます！！！！！とっても嬉しいです。ぼちぼちまた更新してまいります！！！ (5月7日 21時) (
レス) @page32 id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
令霊(プロフ) - 前作のしきからずっと大好きな作品です。気が向いた時にでものんびり更新してくださると嬉しいです。 (5月5日 23時) (レス) @page11 id: 3183f8a143 (このIDを非表示/違反報告)
さかなしょこじゅん - 田中さん» 思った以上に想像で補って頂けて嬉しいです！笑 分かります、具体的に何がいいかって聞かれるとわかんないんですけどなんかいいですよね。なんか。 (11月24日 7時) (レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
田中(プロフ) - ciくんのやつで主ちゃんが56されちゃったあとに、スパイが発見されて優秀なコマがひとつ減らされることまでが計画的犯行だったとか、あと数日56すのを待てば助かったのかとか自責の念でciは苛まれて欲しいですね…、そういうの好きです^_^ (11月24日 2時) (レス) @page11 id: d6054e066b (このIDを非表示/違反報告)
さかなしょこじゅん - なんも思いつかねえ (11月21日 0時) (レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかなしょこじゅん | 作成日時：2023年11月11日 0時
