16 ページ18
恥ずかしいから目を閉じて、と言われて目を閉じる。
ゆっくりと左手を持ち上げられて、何かが薬指にはめられた。少しひんやりとしていて重い。
目を開けると私の左薬指には綺麗な指輪がはめられていた。まるで婚約指輪のような。
「ずっと渡そうと思ってたんだけどね、機会がなくて。重いって引かれたくなかったんだ。でもやっと渡せる。悟は寝ちゃったけど、私と悟で選んだんだよ」
どれが良いか分からなかったから硝子にも助言をもらったらしい。
私の反応を伺って、心配そうに私を見ている。
もし引かれたらどうしよう。という傑の不安が見て取れる。緊張していかり肩になっているし、毎日こまめにリップを塗っている綺麗な唇を強く噛んでいる。
そんな傑を見て笑いが込み上げてしまった。
「傑、別に付き合ったからって指輪は渡さないんだよ。婚約の時か結婚の時でなきゃ」
「え、そうなの....?」
「そうだよ。その様子だと2人とも知らなかったんだね」
キョトン、と目を丸くした後、みるみると傑の顔がりんごのように真っ赤っかになってぷるぷると震え出す。若干、目の端に涙が溜まっている。
「ごっ、ごめんねっ、ずっと、付き合ったら渡すのかと思ってたから。い、今のは忘れて!私っ、」
「なんでよ。嬉しいよ」
「ほ、本当に?付き合っただけなのに、婚約指輪もらっても嬉しくないでしょ。お、重かったよね?」
「んー。傑、手を出して」
あまりに想定外だったのかパニックになっている傑に、私は手の平を傑の方に向けてひらひらと動かしてみせた。
私の言うことを聞いて、大きな両手をちょこんと私の手に乗せる。
「いい子。じっとしていてね、傑。恥ずかしくても目を瞑っちゃダメだよ」
「?」
傑は何をされるか分からないといったように、小さくこてんと首を傾けている。
そんな傑に微笑んで、私も同様に左手を掴んで、ちゅ、ちゅ、とリップ音を立てながら、肘から指先へとキスを落としていく。
そして薬指付近まで来ると、口を小さく開けて傑の薬指を食みまるで指輪のように歯形をつけた。
「どう?私が嬉しいって伝わった?」
「う、ん。伝わった」
「今度、傑と悟に似合う指輪買いに行こうね。私が選んであげる」
「!、うん!」
傑の喉からきゅう、と音がした。大事そうに歯形がついた薬指を撫でて、そこに口付けをする傑は今までで1番幸せそうだった。
1741人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆかり(プロフ) - 次の作品のパスワード見たいので教えてください! (3月30日 23時) (レス) id: a64b7436ba (このIDを非表示/違反報告)
♡ - 私と手を繋ぐこと許してあげるとか夢主何様だよ爆笑 (3月8日 23時) (レス) @page6 id: 4a3a97ff3f (このIDを非表示/違反報告)
花ノ園(プロフ) - てんごくさん» 当方の作品を読んでくださりありがとうございます!まだまだ更新していくので今後ともよろしくお願い致します!真理に気付いてしまうとは、さては色々な作品を読み込んでおられますね? (3月5日 17時) (レス) id: e5dd021f40 (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - 花ノ園様!!!わたくしはッ、貴方のお陰でッ性癖が捻れに捻じ曲がってなんかもう、大変な事になっております本当に!!!元々、こういうのは、好きだったのですが…!この、神作を見てッ(これの前作読んだ後花ノ園様の作品を読み漁りました、幸せでした。)真理に気付きました (3月5日 16時) (レス) @page14 id: d31d16bd17 (このIDを非表示/違反報告)
花ノ園(プロフ) - ふじさん» 続編が約2年後という超重鎮出勤で申し訳ないです....ページたっぷりで更新して行く予定なので、今後ともよろしくお願いします! (3月5日 15時) (レス) id: e5dd021f40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ