友達の作り方 (ページ9)

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英雄ページ9

サナ視点

「……眠れない」

瞼を閉じても一向に眠りにつく気配すらない。

そんな中で一刻一刻と針を動かす時計は
既に12時を指している

( 少し、気を張りすぎてるのかな……。)

私はそんな事をふと思う

確かに、近頃は様々な異聞帯(ロストベルト)に行ったりして
いつでも気を緩むことの許されない状況が多かった
だからこうなっているのだろう。

気を張りすぎていると休む時こそ休むことが出来ない
とりあえず水でも飲んで心を落ち着かせよう

そう思い私は起き上がりベッドを降りると
マイルームを出て食堂へと足を向けて進んでいった

食堂へと向かうとそこにはアキレウスとケイローンが座って何やら話しているのが見える

私は二人に近づいていくとケイローンがこちらに気づきニコリと笑みを浮かべた

「こんな夜遅くに、一体どうしたのですか？」

そう、優しく彼は言う。

後に続いてアキレウスも私に気づくなり
「どうしたんだ？マスター」
なんて不思議そうな表情を浮かべそう言った。

「少し、寝れなくて……」

私が彼等にそう言うとまるで珍しいとでも言うかのように目を見開いた後に

ケイローンは席を立ちどこかへ行き
アキレウスは自身の隣にある椅子を引いて私を見遣る

私はとりあえず引かれた椅子に座ると

目の前にミルクの注がれたコップが置かれた

薄く透明に近い煙が上がってみるのを見るからに

これはきっとホットミルク、というものなのだろう

「これぐらいしか私には出来ませんが……」

どうやらこれはケイローンが容れてくれたものらしい

私は「ありがとう」と一言だけ言って受けとると
それに口付け口に含み飲み込んだ。

暖かさ、というのはどのくらいの温度なのかは
私にはまだ分からない。

けれど、なんだかどこか心が楽になった気がした

きっとこれを飲んで少しは心が安らいだのだろう

「貴方は近頃、何かと多忙でしたから
きっと無意識にも気を張っていたのでしょう
無理もありません、貴女は人の子なのですから。
貴女は神の教え子達を指導し導く者ではなければ
大海原を仲間と旅する船長でもないのです。
貴女自身は英雄ではない、ということをお忘れなきように」

「……うん、ありがとう、ケイローン。」

優しく、宥めるようにそう言ったケイローン。

そんな彼の言葉にどこか救われたような感覚がする。

何かに思い詰めていたのに

まるでそれが綺麗さっぱり消えたみたいな感覚だった