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いつもの通い慣れた道を、らぶちゃんのペダルに足を乗せて自宅への道を快調に走る。



大きな交差点の信号が赤になった。



なんか…
変な感じ


そっと振り返ってみても不審な人はいない。


気のせいかな?ってまた信号に目をやった時、すぐ隣から声をかけられた。




『久しぶりだね。Aちゃん』




ギョッとして横を向くと、つい最近話題に出た
あのキモいやつが気味悪い笑顔で立っていた。




恐怖のあまり言葉が出ず、ただソイツを見て固まっていた。




『最近、ずっとアイツと一緒だったからさ
俺、妬いちゃったよ』




『………………何か……用ですか?』




なんとか声を振り絞って尋ねると、ソイツは不気味に笑った。




『今日は僕が送ってあげるよ』




周りの人には聞こえないぐらいの声

信号が青になり、信号待ちをしていた人達は素知らぬ顔で渡っていく。


もしかして家を知られてるのかも

そう思うと怖くて怖くて…
らぶちゃんのハンドルをギュッと握りしめた。



ハンドルを握っている私の手の上に、キモ男の手が乗った時、通りすぎた車が少し先で止まって誰かが降りて走ってきた。




『Aちゃん!』





聞き慣れた、そして会いたかった人の声に弾かれるように顔を上げると、やっぱり私のヒーローの健二郎さんで、キモ男の手を払い除けた。




『ちっ!』




キモ男は舌打ちして走り去った。




『アイツ……何もされてへんか?』




うんうんと頷くだけの私の手を優しく優しく擦ってくれる。



『今日、だれにも送ってもらわんかったん?』




『……はい』




『臣ちゃんは?』




『休みです』




健二郎さんは眉間に皺を寄せてぶつぶつ言っている。



『何を呑気に休んでんねん』




『…………』



ちょっと理不尽…




『まさかと思うけど、俺が休みの土日ってひとりで帰ってたん?』




『……はい』




はぁーーーとため息をついた健二郎さんは、頭をガシガシと掻いてちょっと怒ってるみたい。





『こんなとこで立ち話せんと帰ろか?送っていくわ』




『でも、私、自転車…』




健二郎さんは私かららぶちゃんを奪うと、止めてあった車の後部座席を畳んで、そこにらぶちゃんを乗せた。



『はい、乗って』




当たり前のように開かれた助手席のドアに、こんな時なのに頬が緩んだ。

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作者名:花梨 | 作成日時:2018年10月1日 0時

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