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本当は自転車は車道を走りなきゃいけないけど、わりと交通量のある道路で、危ないから歩道を走ってても注意はされない。

いくら夜遅くても、歩道を自転車で並走なんてやっぱり危ないから、山下さんに言われた通り、私が前を走ってる。




『で?Aちゃん、あの店長いん?』





『そうですねー。バイト時代から言うと、もう5年になりますー』




『えー?なんてー?聞こえへーん』




そりゃそうだ。
山下さんの前を走る私が、前を向いて話すんだから聞こえづらいのは当たり前




『もう5年になりまーす』




振り返って答えたら




『こらっ!危ないやろ!前見なさい!』




って怒られた。




じゃあどうすりゃいいのよ(泣)




『Aちゃんはホール担当なーん?』




『そーでーす』




『えー?なんてー?』





振り返ると怒られるし……
なのにずっと話しかけてくるし……



なに、この人
可愛すぎ!





『あはははは(笑)』





私は笑いが堪えきれなくなって大きな笑い声をあげた。




『なになに?どーしたーん?』





どうせ答えても聞こえなーいって言うくせに(笑)





信号で止まったら、山下さんが隣に並んだ。




『自転車漕いでいきなり笑い始めたらかなり怖いで?(笑)』




『だって、山下さんがずっと話しかけてくるから〜』




『あぁ……それでか(笑)』




うんって頷くと、山下さんもクシャッと笑った。




『あんな事があって、やっぱり後ろから黙って俺がついていったら怖いかなぁーって思てな』




『それで……』




『一人で小話すんのもなぁ。それはそれで今度は俺が変な人になってまうやん(笑)』




『ですね(笑)』





ふたりでニカッと笑った時、信号が青に変わった。




『ほな、行こかー』




『はーい』





山下さんの前を私が走り、後ろから山下さんが話しかけて


えー?なんてー?聞こえへーん


を繰り返して自宅アパートまで帰ってきた。




『あ!ここ?』




『はい。ほんとにありがとうございました!
山下さん遠回りになりませんでした?』




『おん。俺ん家、この先の……あの白いマンションやもん』




それは、ここらでは一番高い大きなマンションだった。




『お金持ち?』





『発想が貧困すぎや(笑)それと、山下さんやなくて健ちゃんでええよ』




健二郎さんは、カラカラっと笑って、私がらぶちゃんとアパートに入るまで見送ってくれた。

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作者名:花梨 | 作成日時:2018年10月1日 0時

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