壊れかけの世界に呼ばれし神の愛し子３【まほやく】 (ページ50)

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145話ページ50

『まぁ、私の事を話してもいいけど自分のこと知らないからそんなに話せないよ？

だからオーエンのことを聞かせてよ。ダメ？

仲良くなりたいしさ。』

オーエン「…僕も僕の話をしたいけど、僕のことに詳しくないんだよ。」

『！それじゃあお揃いだね。
じゃあ、今の好きな物は？甘いもの？辛いもの？

私はね、みたらし団子が好きなんだよ。モチモチしてて甘い蜜がかかったお菓子。』

オーエン「………甘いもの。赤い果実が上に乗った…」

『あ、ショートケーキ？苺の酸味が甘い生クリームとマッチしてて美味しいよね。』

オーエン「……なんなの。調子狂うんだけど」

オーエンは少し眉間に皺を寄せAを見つめた。
Aもオーエンが自分を見ているのを知っている。わざと話しているのだ。

『あはは、喋りすぎた？ごめんねオーエン』

オーエン「はぁ…せっかくきみの話してあげようとしたのに」

『へ〜。君は私のこと知ってるんだ？』

オーエン「あぁ、きみがどう思われているか。

きみが何をすると笑われるのか、きみが何をすると恨まれるのか、きみが何をすると褒められるのか。

バレードはいい気分だった？パーティはいい気分だったかい?

あんなものは、子供だましの手品だよ。

きみが出会った魔法使いも、この世界の人々も、きみのことなんか、どうだっていいんだ。

きみが賢者らしくしていれば、相手をしてくれるけど役目を忘れた途端、責め立てられる。

賢者じゃないきみになんて誰も用はないんだもの。それは、きみだって同じことじゃない？」

『…確かにね。あのヒト達は私なんかどうでも良くて、［賢者］っていう称号にしか目がないのはわかってるよ。

さすがに私はそこまで馬鹿じゃない。』

Aはバルコニーの柵に腕をのせ、中庭を見つめる。
その姿はどこか儚かった。

『でもこれも1年間我慢すればいいだけの話だ。賢者の役目は魔法使いをまとめて、月を撃退するんでしょ。

だから、その1年間さえ乗り越えれば元の世界に戻れるはずなんだよ。その時まで辛抱強く我慢すれば…』

オーエン「もし帰れなかったら？」