壊れかけの世界に呼ばれし神の愛し子３【まほやく】 (ページ22)

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117話ページ22

さり気なく漂う、上品な彼の香水の匂いがAの気分を華やかにさせた。

『んーん、大丈夫。乗せてくれてありがと、ラスティカ。
けど、重くない？大丈夫かな？』

ラスティカ「まさか。羽を乗せるような心地ですよ。

それでは、参りましょう。
はじめは揺れますが、すぐに安定します。

どうか、怖がらないで。」

ラスティカのが、ふわりと浮かび上がって、爪先が地上から離れる。

Aはつま先が浮くと子供のように足をぶらぶらさせた。

ラスティカ「風が冷たくないですか?」

『うん、大丈夫だよ。』

そして、ラスティカと雑談をしながら下を眺める。

広大な大地を見下ろすと、自分がいた世界のことを懐かしく思う。

あぁ、もう帰れないかもしれないそんな考えがよぎってしまった。

『私、この世界のことも好きかもしれない。だんだん、好きになってきた気がするの。

不思議で、きれい。でも、たまに怖くなる…。』

だってこの世界を愛してしまえば、帰るとなった時きっと迷って、悩んで、苦しくなって帰れる自信が無くなってしまいそう。

だからAはあとの言葉を濁した。

ラスティカ「……それは良かった。
賢者様に気に入ってもらえたなら、僕も嬉しい。この世界も、きっと。」

優しい風が、空と大地の間を吹き抜けていく。

だけど、見渡す限り美しい自然にあふれた景色は、次第に残酷な爪痕を明らかにしていった。