【smパロディ】ももたろう (ページ9)

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９．帰ろうページ9

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　お昼が過ぎ、夕方になりました。

　桃太郎と赤鬼は、まだ戦い続けていました。
　どちらも同じだけ傷を受け、同じだけ疲れきって、ふらふらになっています。
　潮が満ちてきたので、戦いの場所は砂浜の外れへ移っていました。

　雉と男は木陰に寝そべって、昼寝をしていました。
　犬はそのそばから戦いを見ています。

「夜になるよ」

と桃太郎が言いました。

「そうだね、暗くなる」

と赤鬼が答えました。

　２人とも、刀と金棒をぐっと握りなおし、にやりと笑います。

「暗くなっても君は強いんだろうね」
「あんたも簡単には斬れないんだろうね」

　刀と金棒が振り上がり、ぱっと飛び出したのは、桃太郎ひとりだけでした。
　赤鬼の腰には、木の上から飛び出した猿がしがみついていたからです。

「もうやめよ！」

　猿が叫んだ声で、桃太郎の刀も赤鬼の金棒も、それぞれの顔の前でぴたりと止まりました。

「これ以上やっても何にもならんから。
　痛いだけやから。
　しんどいだけやから」
「……」
「……」
「おむすびおいしかった。
　ありがとう。
　あのとき言えんかったけど、プロテインバーももらって助かった。
　ありがとう」

　赤鬼に抱きつきながら、猿は泣いていました。

「２人とも強いから。
　俺知ってるから」
「……猿」
「……猿さん」
「だからもう……もう、帰ろ」

　猿を見つめながら、２人とも、静かに武器を下ろしました。
　桃太郎は空を見上げると、突然

「あーーーーーっ！」

と叫び、眠っていた雉と男がびっくりしてとび起きました。

「楽しかったーーーーーっ！」

　桃太郎の声が空へ吸い込まれていきます。
　赤鬼も海の方を向きました。

「俺も楽しかったーーーーーっ！
　あと疲れた！」
「俺も！」

　顔を見合わせて笑った２人に、歩いてきた青鬼は「終わり、でいい？」と聞きました。
　桃太郎がうなずきました。

「終わり終わり。なんか超満足」
「俺もう鬼として一生分戦った気がする」
「俺ももう一生分バトル見たわ」
「見てただけじゃん」

とツッコんだ桃太郎は力尽きてぐらっとよろけ、駆け寄ってきた犬に支えられました。
　その後ろから来た男は「帰ろうか」と誰にともなく言いました。

「ん。帰ろ帰ろ」
「帰ろうよ」

　砂浜はもう暗くなっています。
　倒れる寸前の赤鬼は、青鬼と男が支えました。
　同じく桃太郎を、犬と雉が支えます。
　まだ出てくる涙をごしごし拭う猿をしんがりに、７人は鬼たちの家へ戻りました。