11.大団円 ページ11
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雉が空を飛んで方角を確かめ、桃太郎と犬と猿と男と赤鬼と青鬼は、交代で櫂を漕ぎます。水を汲みだす必要もなく、交代しながら焦げたので、着たときよりもずっと楽々と町へたどり着くことができました。
ところが、町は大混乱になっていました。
雉を従えて戻ってくる船を見た殿様は、「復讐されるに違いない」と思い込み、船で買い付けていた食べ物を全部持って逃げてしまったのです。
「今日の朝の市に出るはずだった食べ物が、まったくないのです」
「は? ふざけんな。
掴まえてボコボコにしてやろうぜ」
「翔太、その前に皆さんが食べるものがないと」
町の人々のために怒る青鬼といさめる赤鬼の姿は、『鬼ヶ島の恐ろしい鬼』の印象をぬぐうには十分でした。
桃太郎たちは町に残っていた船を使って、鬼ヶ島に引き返しました。
犬だけは隣の村へ、町の危機を知らせに行きました。
桃太郎たちが鬼ヶ島にあった食べ物を積んで戻ってくると、赤鬼と猿はすぐさま炊き出しの準備をはじめました。
犬も、たくさんのプロテインバーを抱えたおじいさんおばあさんと一緒に戻ってきました。
町に知り合いの多かったおばあさんはみんなを落ち着かせ、おじいさんは筋肉自慢の知り合いに声をかけて、あっという間にキャンピングエリアを用意してくれました。
食事がいきわたると、町の人たちは口々に感謝して、どうか桃太郎に町をおさめてほしいと頼みました。
ところが桃太郎の答えは、
「え、俺町おさめるとか無理」
でした。
「俺、マイクラとシムシティしかやったことない。
あべちゃあん……」
桃太郎が泣きつくと、犬は少し考えてから答えました。
「うーん……俺も1人だと無理だな。
だけど
料理できる人と、
衛生に気を使える人と、
知り合いが多い人と、
鬼ヶ島で食料を作れる力持ちの人と、
同じくらい強くてみんなを守ってくれる人と
空から安全を見守れる人と、
あと外の国に知り合いがいる人がいれば……いける気がしない?」
「料理なら任せて」
「掃除なら普通にするけど。つかお前らもしろよ」
「俺顔広いから。でかいんじゃなくて広いから」
「筋肉仲間のアニキたちもいるし」
「俺も照手伝う!」
「空飛ぶっていったら僕じゃん!」
「俺……西の国にいっぱい知り合いいる!」
「じゃあ、大丈夫だよ」
「そっか、大丈夫かー!」
こうして9人は一緒に町をおさめ、町は大変豊かに栄えましたとさ。
めでたしめでたし。
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作者名:知り合いのすのたんに布教を受けました | 作成日時:2023年7月11日 17時