優等生恋情【不死川実弥】 (ページ14)

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スマートフォンをふるふると揺らす。すると、家族以外入っていなかったトークアプリの連絡先が増えた。竈門炭治郎に不死川玄弥、栗花落カナヲ、胡蝶しのぶ。名前もしっかり覚えた。よろしく、と送られてくるスタンプにこちらもスタンプで返しながら、手元を忙しなく動かす。

四人、新しく友達として追加された。友達欄を眺めていると頬が緩んでしまう。

「A、何にやにやしてるんだ？」
「っ、え？」

パフェ店を出てその脇にしゃがんで液晶を見つめていた。ひょい、と上から画面をのぞき込まれる。

「え、っと、こういうの初めてだったから、嬉しくて……」

素直に自分の気持ちを伝えるのは、いつも気恥ずかしさが付き纏う。だから声はだんだん尻すぼみになってしまうし、そのせいで恥ずかしがっているのが相手に気付かれてしまうことも恥ずかしい。
スマートフォンを握りしめる。

「そうか！俺もAと連絡先を交換できてよかった！」

竈門くんは素直だ。こんなにも直球で伝えて恥ずかしくならないのだろうか。私だったら口に出すたび顔を赤くしているだろう。

「……わ、私も、嬉しい」

栗花落さんは竈門くんと違ってこういうのは恥ずかしがるタイプなのかもしれない。ほんの少しだけ普段に比べて頬に赤みがさしている。かわいらしいと思った。いつも無表情な栗花落さんのイメージが一気に変わる。

気付くともう夕方だった。街のあらゆるところ、賑やかな看板や背の低い木々、道行く人々に赤い光が反射する。この時間帯の影は暗く感じる。夜に近いからそう感じるのだろうか。

この赤い光によって作られる影が好きだ。飲み込まれてしまいそうな色が好きだ。飲み込まれたら、きっと夜に閉じ込められるような気がする。

私は皆と別れて帰路についていた。さっきまで騒がしい音と共にいたせいか、静かな住宅街はどこか物悲しい。
やはり独りでいるとこういうことばかり考えてしまう。けれど考えることは案外嫌いではない。