優等生恋情【不死川実弥】 (ページ12)

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項垂れて申し訳なさそうにまつ毛を伏せる。泣いたせいか少し鼻の頭が赤くなっていた。年相応なところもあるんだとどこかホッとする。

「ごめんなさい」
「いや、大丈夫……。何かあった？」

私たちの後ろでは竈門くんが心配そうに見つめている。

「ううん」

ふるふると首を振り否定する。濡れ羽色の艶やかな髪もそれに合わせて揺れる。濡れ羽色の髪というのは美しい。光が当たったところが茶色になるのではなく、青みがかった黒に変化する。

中途半端に焦げ茶色の私とは違う。黒に限りなく近いが、完全な黒ではない。せめて茶色側に寄ってくれたら好きになれたのかもしれないと、自身の髪を見ながら思う。

外に出されていた可愛らしい看板だけで決めたお店は、放課後の寄り道を楽しむ女子高生で溢れかえっていた。竈門くんの「せっかくだから何か食べに行かないか！！」という一言がきっかけでこのおしゃれなパフェ店に入ることになってしまった。

「Aさんも何か頼みます？」

そう言って胡蝶先輩がメニュー表を渡してくれる。何も言わずに会釈をして受け取る。
こういうとき、「ありがとうございます」と言えたらどんなに良いだろうか。

さらっとメニューを眺める。ひときわ目を引く大きなパフェがあった。苺やクリームが何層にも重なっている。それを食べたときを想像すると、口の中いっぱいにクリームの甘さと苺の甘酸っぱさが広がった。よだれが口内に溜まる。

おいしそうだった。けれども、このパフェはこの商店街によく似合っている。だから食べる気が失せた。だれかこれを食べている人はいるのだろうかと辺りを見渡すと、ちょうど隣のテーブルが目に入った。二人の女子が纏うのは紛れもなくキメツ学園の制服だ。

二人とも長い爪でしきりにスマートフォンをいじっている。デコレーションされたスマホは店内の照明を反射しキラキラと光っている。視力の関係であまり見えないが、きっとあれはスパンコールだ。