番外編4 ページ7
＊
「は？そっちがぶつかって来たんじゃ…。」
見た感じ、高校生か大学生といった所だろう。だが、明らかに柄の悪そうな男達に、強気で返そうとしていた2人も彼らを見て愕然としてしまった。
「慰謝料、払ってくんね？」
「1000万くらいで許してやるからさ！」
「いや、すみません。持ってないです…。」
段々と声が小さくなる語尾から、2人の恐怖が読み取れる。かなり厄介なことに巻き込まれてしまった、そう思った。
「許してやるつってんだから、大人しく金出せよ。」
たかが中学生の男子がそんな大金を持っている訳がない。それを分かっていて絡んでいるのだから、タチの悪い輩である。
「あ、じゃあそこのお姉さん俺らに渡すって言うのはどう？」
「うわ、優しいー。金払わなくても許してくれるんだってさ。どうする？」
最初から、これが目的か。
2人は私を彼らに引き渡すのだろう。私が何をしたという訳でもないのに、他人に良いように使われる。そんな事実に虫唾が走った。
「ど、どうぞ…。」
「まじ？悪いねェー、お姉さん。」
「オトモダチに尻拭いさせられちゃって可哀想に。」
私を置いて、そそくさと逃げていく2人。次学校で合ったら容赦しない。それより前に、無事に家に帰れるかが問題だが。この状況で助けてくれる人なんていないのだろう。
「おい。」
人混みの喧騒の中、やけにその声だけがよく響いた。
「てめェら、何してんだ。」
「お兄さん誰に向かってもの言って＿」
「あ゛？」
ガン決まった目に、皺のよった眉間。いつもの数倍落ち着いた声が、彼の怖さを倍増させる。
中学生とは思えない覇気に命の危機でも感じたのか、絡んできた2人はかっちゃんの一言だけで去っていった。
「はぁ。」
「なに座り込んでんだよ。」
恐怖心と、安堵。その相対する感情に襲われ、思わず足の力が抜けた。
「立てない。」
「ハッ、あんなのにビビったんかよ！」
「うん、そうみたい。」
やけに素直な私の言葉に少し驚きを見せたものの、一瞬でいつもの不機嫌な顔へと戻った。そして、私の前に座り込む。
「え？」
「乗れ。」
「…え？」
「邪魔だろうが！立てねェなら乗れや！！」
「あ、うん…。」
普段見せることのない優しさに、今度は私が面食らった。
そんな私に構わず、背中に私をおぶったかっちゃんは、家の方へ向かって歩き出した。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
