78.狂気な目 ページ40
＊
「Aちゃん…カァイイ名前！私もそう呼ぶね。」
ジリジリと距離を詰めて私に語りかける彼女に、恐ろしさを覚えて後ずさる。肩の傷は思ったよりも深かったのか、ドクドクと血が流れる感覚がして気持ちが悪い。
「私のことはトガちゃんと呼んでください！お友達だもの！」
「拒否するわ。」
「Aちゃん、傷が…！」
起き上がった梅雨ちゃんが、肩から流れる血に気がついたのか驚いた目で私を見る。
「物理的な攻撃はどうすることもできないの。」
こちらへ駆けてくるお茶子ちゃんを見てか、彼女はそのまま私を反対側の木へと追いやる。
「血出てるねえ。Aちゃん？カァイイねぇ。血って私、大好きだよ。」
狂気な目で私を見つめ、ナイフを取り出す彼女に距離を取ろうと試行錯誤するものの、かすり傷を増やす一方だった。
「Aちゃん！」
「離れて！！」
梅雨ちゃんの舌で遠くへ離され、彼女に向けてお茶子ちゃんが向かっていく。
＿ドン！
「痛っ…！」
左肩を庇っての着地はうまくいかず、反対側の肩を強く地面に打つ。
すると後ろから誰かの足音が聞こえ、思わず身構えた。
「Aちゃん！！」
「出久…？」
声のした方に目をやると、障子くんに抱えられた出久が見える。ああやっぱり酷い怪我を負っている、そんな苦い気持ちが真っ先に浮かんだ。
轟くんや常闇くんに囲われているかっちゃんが血相を変えて私の方へ走ってくる。傷だらけの私に驚いたのか、普段見ることのない表情をしていた。
「おい、その怪我…！」
「私は、大丈夫。それよりお茶子ちゃん達が…」
私の一言に障子くんが走って助けに行く。
「おい、立てるか？」
かっちゃんに支えられ、何とか立ち上がる。血はまだ止まる気配がない。轟くんが背負っていた人を一度降ろし、彼の上着で止血をしてくれた。
「ありがとう。ごめん、上着…」
「気にするな。」
うわっ！というお茶子ちゃんの声が聞こえ、誰かが去っていく音がした。急いで轟くんと駆け寄ると、もう彼女の姿はなかった。
2人の無事を確認すると、出久からかっちゃんの護衛をしつつ施設に向かっていることを告げられる。
きょとん、とする2人。
「ケロ？爆豪ちゃんを護衛？その爆豪ちゃんはどこにいるの？」
後ろを振り向くと、かっちゃんの姿が見えない。さっと血の気が引いていく。
「さっきまで居たのに！」
「彼なら…俺のマジックでもらっちゃったよ。」
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
