77.嫌な夢 ページ39
＊
マンダレイの指示により、飯田くんと共に宿舎へ戻ることとなった。
「出久…？」
先ほどからどこか浮かない顔をしている出久に、声をかける。
「ごめんAちゃん、先に行ってて。」
「え、」
「洸太くんを助けに行かなきゃ！」
「出久！」
私の腕を振り払い、どこかへ向けて一目散に走っていく出久。その姿にいつか見た嫌な夢を思い出す。
「緑谷くんはいつも…真宮くん！？」
「先行ってて！！」
嫌な予感が、夢が消えてくれない。私は出久が駆けて行った方向に向かって、無我夢中に走り出す。だが、煙が充満していることもあり、早々に出久を見失ってしまった。
ひたすらに走っていると、脳内にマンダレイからのテレパスが届く。
「A組B組総員、プロヒーローイレイザーヘッドの名において戦闘を許可する！」
少しすると、続けてテレパスが入った。
「ヴィランの狙いが１つ判明！狙いは生徒のかっちゃん！」
「かっちゃん…？」
「かっちゃんはなるべく戦闘を避けて、単独では動かないこと！分かった？かっちゃん！」
あのかっちゃんが、こんな状況下で戦闘を避ける訳がない。むしろ自分から突っ込んでいくタイプだ。
出久も、かっちゃんも。危険だと分かっていて、それでも戦わずにはいられない。そんな2人だからこそ、いつか私だけを残して2人ともどこかへ行ってしまいそうで怖いのだ。
「Aちゃん！？」
「どうしてここに…？」
「お茶子ちゃん！梅雨ちゃん！」
ひたすらに森を走り抜け、道に出たところでお茶子ちゃんと梅雨ちゃんに遭遇する。
「！お茶子ちゃん、その腕…。」
「かすっただけ、大丈夫。」
2人の先に、誰か女の子がいるのが見えた。制服姿でナイフを手にする彼女は、私たちと向き合いながら笑みを浮かべている。
「トガです。3人ともカァイイね〜、麗日さんと蛙吹さん、それから真宮さん。」
「名前バレとる。」
「体育祭かしら。何にせよ情報は割れてるってことね。」
「不利…。」
血がどうこうと語る彼女は、ナイフを持って私たちに切り掛かってくる。
梅雨ちゃんが舌でお茶子ちゃんを施設の方へと投げ、走って逃げるよう伝えた。梅雨ちゃんも走って逃げようとするところで、彼女は私たちを追ってくる。
「梅雨ちゃん！」
咄嗟に梅雨ちゃんをお茶子ちゃんと同じ方向へ倒し、彼女のナイフが私の肩を掠めた。
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
