66.悲惨な ページ28
＊
「轟さん！！」
ヤオモモの一言で先生の頭に轟の文字が浮かぶはず。彼からの攻撃に備える隙に、私は後ろから先生の全身を薄く覆う氷結を放ち、凍らせる。
轟くんはヤオモモの合図と共に炎熱を地面に放ち、周りの空気を温めた。
熱によって私が放った氷は溶ける。
「ニチノール合金ご存じですか？加熱によって瞬時に元の形を形成する…形状記憶合金ですわ！」
代わりに、ヤオモモの作った捕縛布が元の形になり、先生を捕獲した。
「…大したもんじゃないか。」
時間のハンデがあったものの、5分どころか10分以上余らせる速さで私たちのチームは条件を達成した。
「2人ともお疲れ様。」
「こんなすんなりいくか。」
「いえ…しかし…カタパルトの発射で私…ミスを犯しました。先生は気づいた上で距離を取った。あの隙に防げたはずなのに…先生は故意に乗っかったよう見受けられました。」
「隣の轟、姿を消した真宮からの攻撃を警戒しただけだ。俺が最善手だと思い引いて、それがお前の策略通りだったわけだ。」
先生の一言に、泣きそうになるヤオモモ。普段厳しいし、余計に嬉しいんだろうな。
クラスで1番に条件を達成した私たちは、リカバリーガールのいる保健所で治癒してもらっていた。
「皆さん、それぞれすごい戦いをされていますね。」
「だな。特に緑谷たちのところは…」
オールマイトにボロボロにされる2人。どうにか協力しあっているようだが、圧倒的な力を前に歯が立たないようだ。
「真宮、大丈夫か。無理してまで見る必要も…。」
「大丈夫。良い加減、受け入れないとだから。」
正直、今すぐにでも助けに行きたい。2人が傷つくところを見ていられない。でも私も、2人を信じて待つことが出来るように、彼らの目指す先を受け入れなくてはいけない。これは絶対に、2人にとって必要なこと。
悲惨な光景を映し出すスクリーンに、深呼吸をしてふたたび向き合った。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
